若武者あらわる

 いいねぇ。いいねぇ。いいねぇ。山口俊。

 わが横浜にひっさしぶりの若武者登場だいっ。高卒ルーキー1軍初登板初先発初勝利。5回2アウトまでパーフェクト。6イニング投げて被安打2。餅のように粘る腰。巻き込むようにミットに吸い込ませる球。李承ヨプを二打席連続空振り三振切りっ。

 やるねぇ。やるねぇ。やるねぇ。やまぐちしゅんっ。以前涌井を西武に横取りされたこともこれで忘れてやろうというものだ。

 村田が頑張り、古木がよみがえり、那須野が粘り、小池があわやサイクル達成。ベテラン勢だって石井も2000本安打なぞ通過点だもんね、と打ちまくり、代打の尚典も勝負強さを取り戻し、先発陣がようやく落ち着きだし…。でもチームは相変わらず最下位とな。そうだったっけ(笑)?

 さあ、多村。君が戻っても定位置はベンチかもしれんぞ。ケガとつき合う君の趣味はもう捨てたらどうだ。首輪を外せ。鉢巻締めろ。横浜はどんどん変わってきているぞ。

 進め山口俊っ。大分は柳ケ浦高からやってきた若きサムライ。

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WBCかラーメンか

 さすがはボールゲーム発祥の地だ。蓋つきの球場なんか面白くもなんともないじゃないか。雨が止むのを待つだけのことさ。飯食ったり、昼寝したりしていればいい。たとえ何時間だろうが。…ほーら雨が上がったぞ。それじゃ天然芝や土を覆っていたシートを片付けるとするか。おーい、みんな集まれ。この巨大ソーセージで巻き取るぞ。転がせ転がせ。ごろごろ。

 自国チームが敗退しようが、アジア勢同士の準決であろうが、アメリカという国はこんな素敵な光景を通してボールゲーム文化の魅力の一端を伝えてくれる。LOVE BASEBALL!

 さて、ラーメンすすってる場合じゃないぞ。その日はキューバとの決戦日じゃないか。くそぉ。なんでそんな日に限ってTVの前にかじりつけないのだ。多村が描く左中間スタンドへの弧をこの目に焼き付けられないのだ。ついでながら、その日は健太エスパルスが開幕4連勝を果たす日でもある。なんで日本平スタジアムに駆けつけられないのだ。藤本淳吾の繰り出すスルーパスやFKやCKから生まれるファンタジーを見届けられないのだ。

 そうなのだ。つかけんはなぜか喜多方にいることになっているのだその日。ラーメンすすっている場合か。蔵巡りしている場合か。

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泣く

 人前で泣く。

 そんな機会はなかなかめぐってきてくれない。そも、泣くこと自体ここんとこご無沙汰だ。にじむ涙やら伝う涙程度だなあったとしても。号泣などにいたってはとっくに忘れている。

 人前で泣く。

 なんだこれ。しかも何万人もの目が注がれる真ん中でだ。一体なんなんだこの言いようのない空間は。空気は。やめてくれよそんな素敵な光景を俺の目の前で。

 人前で泣く。

 マイクを握り、球場にいる、TVの前にいる子供達に向けて放った一言。「野球っていいもんだぞぉ」。なんなんだこのシンプルさ、あたたかさ、深さ、そして切なさは。やめてくれよそんな普段着のセリフで俺を揺さぶるのは。なんでもっとキザなセリフを吐かなかったんだ誰かさんたちみたいに。…まぶしすぎるよ野村謙二郎。

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おらが国の野球チーム

 他の5試合が気になる。がんばれパ・リーグ各チーム。
 セ・パ交流戦が始まり第5節が終わった。折り返しまであと1節となった今、振り返ればいつもパ・リーグを応援していた自分に気づく。

 これは公式戦なのだからすべてのデータがチームや個人の成績に反映される。本当かよ。最初そう聞かされても実感はなかった。が、実際に始まってみると見事にその通りだ。本当でやんの。交流戦前まで目を向けていたのは同リーグ他の2試合に決まっている。今はその数が5試合にも増えた。めまぐるしいったらありゃしない。んにゃ、数が増えたことを言ってるんじゃない。昨年までのように贔屓チームがいくら勝とうが同リーグ他の2試合の結果によってはうんともすんとも戦績に反映されないことが多々あった。それがこの交流戦ではどうだ。そのすべてがしっかり反映されるではないか。太平洋に沈むセ・リーグ5戦艦の図なんて見せられた日にゃ祝杯である。もちろん横浜がそれに仲良くつき合ってはお話にならない。横浜だけは沈められてはいけないことになっている。「頑張れ横浜&パの残り5チーム」だ。もちろん例えばあなたが西武ファンならば「横浜」を「西武」に、「パ」を「セ」に置きかえればいい。なんと分かりやすい構図であることよ。…なにを今更ってか。かか。

 それにしてもどのチームも強いんだな。どのチームもいいピッチャーを抱えているんだな。横浜にくれないかなぁロッテの渡辺俊と小林雅。西武の豊田。オリックスの川越とJP。ソフトバンクの杉内、新垣それに三瀬。しっかしプロ野球選手ってこんなにたくさんいるんだ。今までどこに隠れていたんだ。

 ところでもう一つ気になる野球空間がある。石毛宏典氏が起ち上げた「四国アイランドリーグ」だ。どこぞの国の物真似であれなんであれ「始める」ことに勝るものなし。百の議論より一つの行動だ。とにかく走り出した。ポシャってもいいじゃないか。走り出したことに拍手喝さいだ。頑張れ石毛。頑張れスタッフ。頑張れスポンサー。頑張れ四国四県。そして頑張れ選手達@香川オリーブガイナーズ、愛媛マンダリンパイレーツ、徳島インディゴソックス、高知ファイティングドッグズ。
 なに指咥えて見てるんだ腰の重い連中。Jリーグの百年構想もいいけどプロ野球チームを持ってみたくはないか。社会人チームが軒並み休部、廃部に追い込まれている今こそチャンスじゃないか。使えよスポーツをおらが村おこしに。町おこしに。地域おこしに。
 ほら、プロ野球チームを持たない府県(四国は外す)の球団名を考えてやったぞ。企業名なぞハナから入れてないぞ。あっぱれ横浜ベイスターズ。

 新潟イエティ
 栃木ギョーザンパク
 群馬シルキーホース
 茨城ミートコモンズ
 長野Jルーフ
 山梨アース・ウィンド&マウンテンズ
 静岡フジヤマリナーズ
 岐阜ヴァイパーブレイド
 富山ミラージュ
 石川ミリオネアー
 福井エイヘージュ
 滋賀レイカーズ
 三重パーリーホワイツ
 京都オイデヤンクス
 奈良ブダックス
 和歌山アバレンボーズ
 鳥取ホワイトラビッツ
 岡山ピーチボーイズ
 島根イズモンズ
 山口ソンノージョーイズ
 佐賀ムッツゴローズ
 長崎シーボルツ
 熊本ヒゴモッコス
 大分スーパースパー
 宮崎シーガイア
 鹿児島サツマンモス
 沖縄チャンプルーズ

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きっとくる~ん

 と、登録抹消だと。あんなこと書いた翌日にもうそんな展開になっちまって私困るのことよ。本人の申し出を受けた首脳陣の決断らしいが、その速さ、潔さにどう接したらいいのだ。想像通りと戸惑いと安堵と不安と…。
 必ず戻ってくるだよ。絶対戻ってくるだよおまえさん。何年先でもいいから。ほら隣村の工藤衛門も汗流してるでねえか。桑田丸も踏ん張ってるでねえか。…それにしたってとっさに出てくる名前が読瓜村なのがヤだヤだ。

 そういう訳でわが横浜はクローザー抜きで戦わなくてはならなくなった。いや、正しくは魔神抜きで、だ。それなら誰を抑えに使う。今更先発に回ったはずの門倉が戻されることはないだろう。そうだ。今年入団した牛島がいるじゃないか。彼こそ切り札だ。彼なら大丈夫だ。大丈夫な訳ないだろ。

 充実している中継ぎ陣を回すのが妥当な線だろうな。木塚、川村、ホルツ、斎藤隆、岸本、クルーンの6人衆。こいつらの安定度は少なくともセ・リーグではナンバー1だ。さて誰をクローザーに。選手食堂に集まってジャンケンで決める。あるいは日替りメニューにする。んな訳にはいかない。んじゃ誰を。

 新人の岸本には荷が重い。強気の木塚は9回の土壇場で弱気になるかもしれない。経験豊かな川村のスタミナは佐々木復活の日までもちそうにない。実績のある斎藤隆は先発への復帰欲求をどこかに隠していそうで危ない。技巧派ホルツは技巧派ゆえに生命線のストレートの威力が怪しくなるかもしれない。

 ふーむ。誉めていたのがウソのようだ。ふはは…は、笑ってる場合ではない。デニーはどうした。なに、大リーグに挑戦だと。ギャラードは。え、とっくに帰っちまったと。わかた…。なにしてるんだ若田部は。

 で、結論はクルーンだ。そう言いたいがために他のメンツの不安な点をあえて書いたのだ。と言い訳かましてと。なにしろ球が速い。間違って160キロ出すんじゃないか。その速いストレートに140キロ近いフォークなんて混ぜられたら相手打者はたまったもんではないだろう。いやいや、直球とフォークだけじゃない。カーブ、スライダー、チェンジアップ。決め球は豊富なのだ。これだけでもクローザーとしての条件を十分満たすが、それだけではないのだ。彼はお茶目なのだ。もそうだがピッチングそのものがお茶目だ。
 フォアボールで必ず走者を出す。外し方もコースぎりぎりなんて中途半端なことはしない。誰が見たってボールと分かる球でフォアボールにする。コースもてんでばらばらだ。で、ランナーを一人、二人ためたところで続く打者を空振り三振、三振、三振とくる。塁上にランナーがいないと彼にはおもしろくないみたいだ。なんてお茶目なんだ。もしかすると彼は投げながら笑っているのかもしれないぞ。この顔で笑って投げられたら相手打者も吹き出さずにはいられないだろう。球ではなくその顔を見てしまうにちがいないのだ。気がつけば空振りで三振だ。笑うしかないだろう。

 ヘッドなコーチの方が似合っていた山下元監督はもういない。そうなのだ。横浜には新しい笑いが必要なのだ。クルーン。君に求められているのはクローザーとしての役割だけではなさそうだ。

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魔神にあらず

 あああ。またやっちまったよ。

 確かにストレートは140キロ台に乗ってきてはいるさここにきてようやく。フォークが、あのフォークがフォークであるための。でもね…。やっぱり無理なんじゃないかあの佐々木を佐々木に求めるのはもう。

 「ピッチャー……に代わりまして、佐々木」
 「あああ。もうダメだ」
 敵に、そして敵のファンにかつてそうつぶやかせたであろうオーラはもはや望むべくもない。夏でもないのに首から滴らせる汗を拭おうともせずキャッチャーのサインを覗き込む姿。全身から発していたあのオーラ。今や先のアナウンスは敵に期待を、味方に不安をよぎらせるそれに転じてしまった。なにしろ汗を垂らしていないのである。オーラが出ていないのである。誰にでも打たれそうな予感を持たせるごく普通の、いや、それ以下のクローザーになってしまったのかもしれない。もはや「ササキ」という響きに、「22」という数字に、神は宿っていない。

 「ピッチャー佐々木に代わりまして、牛島」

 それしかないだろが。

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幻の257

 「僕はイチローのファンだから、ヒットにして記念のボールをつかむのも悪くないと思ったんだけどね」

 アスレチックス左翼手のバーンズは試合後こう言って笑った。

 カリフォルニア州オークランドで行われたマリナーズとの最終戦。ここまで3打数1安打と「王手」をかけていたイチローがレフトに打ち上げた球はひょろひょろと失速し左翼手のはるか手前の芝に向かって落下し始めた。…が、バーンズが猛ダッシュの前進でこれをグラブの中に捕らえたのだった。

 次の打席を空振り三振で終わったイチローが、シアトルに戻った翌日、キン、コン、カン。「達成」と「塗り替え」をあっけなく果たし、大渦の中にいたのはご存知の通り。様々な人の様々な事後コメントを聞かされたが、多すぎるせいもあろう。その大部分が記憶に残らない。事前の中に残っていた。

 事前といえば、先月中旬頃のコメントもまだ記憶に残っている。本人のだ。それをついでに紹介してやり過ごそ。何を。え? いや、だから、お、お、おむ…らいす。違うぞ。


勝てなきゃ個人成績の意味がないと言う人がいますが、そんなことはないです。…略…僕らはプロ。どれだけ自分が楽しんで、どれだけ見ている人を楽しませるか、…略…チームの勝ちをなかなか期待できない状況でも、ファンには何かの楽しみを提供していかなければならない…後略…
                                ── イチロー

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麦酒の街の大リーグ

 イチローの周辺が騒がしい。ふん、お、オレだって高校卒業後の1年間はイチロー、イチローって呼ばれたぞ。…違うって。それにしても彼のベースボールに対する姿勢というかスタンスはある種のストイックさにおいて例えばスピード・スケーター清水宏保のそれに重なっている。自分の信じる道を極めようという点において剣豪宮本武蔵のそれともダブる。イチローが両者と違うのはストイックであり求道者でありながらスタジアムに足を運んだりTVのスイッチをつける人達の目を意識したエンターテイナーであろうとする姿勢を忘れていないところにある。どうして両立できるのこんなん。そんな彼は私の憧れの一人である。

 ところでベースボール。大リーグといえば私の刷り込みは74年のミルウォーキー・ブリューワーズなのだ。1ヶ月にわたるホームステイの間、スミス・ファミリーが私をあちこち引っ張りまわしてくれた中にブリューワーズのホームゲームがある。

 球場に向かう黄色いバスの中はミルウォーキーの名物といえばこれだろ、なビールの香りが立ちこめ、床にピーナツの殻があとからあとから捨てられてゆく。殻だらけ。バスの運ちゃんだって撒いてるぞ。もしや飲んでもいたか運ちゃん。で、歌なんぞ皆で歌いながら足踏みするもんだから当然細かくなるわな殻は。
 到着後、そんなバス放っといて乗客の皆さんうきうき球場へ歩く。回りを見るとあちこちのバスから似たような笑顔がぞろぞろ降りてくる。大きな声で歌ってるの、騒いでるのは数えきれず、すでに出来上がった赤い顔もちらほら。
 スタジアムに入った後もスタンドで飲むわ食うわ歌うわ騒ぐわ。何しに来たんだお前ら。が、ブリューワーズがチャンスを迎えるとそれが猫のようにおとなしくなるではないか。ようやく試合に集中したのだ。飲むのはビールでなく固唾である。じっと成り行きを見守っている。かーーんっ。抜けたっ。回れ回れっ。ほら矢のような敵の返球が来る。どうだ。どうなんだ……やった! こうして得点が入ろうものなら全員立ち上がって拍手喝さい。はたして大騒ぎは再開されるのであった。
 そんなこんなの時間が過ぎ、ふと足元を覗けばまたまたピーナツの殻の山だ。なんだよここでもかよ。って、よく見りゃおいらの真下でやんの。ふはは。結局負けてしまったその試合終了後もまだ続いてるのだ大騒ぎ。誰かがビールを空けた紙コップを天井に届くくらい積み重ねてゆーらゆら。ここでも拍手喝さい。なんていうんだろう。これが大リーグの楽しみ方、醍醐味なんだとにっぽんから来た少年は刷り込まれたのかもね。殻の捨て方も。

 あ、そうそう。大事なことを忘れてた。ハーフタイム(4イニングか5イニング終了後)に水撒きしグランドをならすにいちゃんおっちゃん達に混じって登場したのがアメフト顔負けのキュートなチアガールズだったんだ。むふふふ。いいなぁあれ。

「どう。興奮したかい」
帰りのバスの中でパパのリチャードは尋ねた。
「は、はい。あのチアガー…、あ、いや、楽しい試合でしたねっ」
バスの心地好い揺れは少年の上気した赤い頬をゆっくりと鎮めていった。

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あなたは近鉄です

 い、いきなりそう言われたって困るのだ。「あなたは近鉄です」。だからなんなんだ。一人じゃやっていけそうもないから誰かとくっつけってか。んにゃ、そんなことを言ってるんじゃない。見ず知らずの相手に向かって吐くセリフがこれでいいのかアンタ。

…などとぶつくさひとりごちているというのも、もとはといえば私が悪い。ああそうだとも。これをやった私が悪いのだ。やらなければこんなことにはならなかったのだこの球団占いを。しかしだ。渦中の名前を出すこたぁないだろう。

 「有言実行を信条」。「的確な判断力」。「周囲の信頼も厚く」。「リーダーとしての才能」。「クリエイティブな仕事に才能」。「恋愛にはやや臆病」。「その一途さゆえ大恋愛」。「柔軟に考える」。「独立心が旺盛」…ほらほらせっかくのあんなこんなくすぐりフレーズも空を切るだけだ。絵になる中村の空振りとは訳が違うのだ。

 そもそも私は横浜だ。佐々木だ。デニーだ。多村だ。加藤だ。昔からそういうことになっているのだ。悔しいので家族全員の氏名、生年月日、血液型をかたっぱしから入力してみた。かちゃかちゃ。

 「あなたは阪神です」。「あなたはダイエーです」。「あなたはロッテです」。「あなたは日本ハムです」。

 出ないやん横浜が。なんでやねん。こうなったら適当な名前とか適当な生年月日とか打ち込んだれ。かちゃかちゃかちゃ…。鈴木一朗「あなたは中日です」。伴宙太「あなたはヤクルトです」。田中角栄「あなたはダイエーです」。徳川家康「あなたは近鉄です」。…なんでやねん。なんで横浜出ないねん。

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冬のオリンピックにまつわるエトセトラ

 今年2004年の話題を挙げろと問われれば、アテネで開かれるスポーツの国際的な祭典もまぁそのひとつかな。楽しみにしていない訳ではないのだが、冬のそれに比べるとなぁ。今一つなぁ。

 夏のオリンピックは華やかだ。色とりどりだ。なんでもありだ。大相撲だってあるかもしれない。綱引きの復活を願う。野球をなくすな。

 しかしだ。競技種目の百花繚乱は集中力を削ぐものだ。冬を見ろ。どんなに知恵を絞ろうとその数はたかが知れている。なにせ相手は雪と氷だけなのだ。潔さが違うのだ。んな訳で、雪が踏まれ、蹴散らされ、粉と舞う山々や大地にこそ、そして鋭い直線と滑らかな曲線に削られる氷が一瞬の衝撃のすぐ後にはもう何事もなかったかのようにきらめく真っ平な楕円形にこそ、私の熱い視線は注がれるのである。さあ、トリノはいつなんだ。まさか2年後じゃないだろな。

 かつて鼻垂れ小僧の目に焼き付けられた「札幌」は、「日の丸飛行隊」でもなくジャネット・リンの笑顔とすってんころりんでもない。それは、ほとんどの各国選手団がその競技を終了させていた閉会式前後の選手村での1シーンだ。日本語なぞ喋れるはずもない彼ら、彼女たちによって、各々手にしたローマ字かなんかのふられたであろう歌詞カードを見ながら歌われる「虹と雪のバラード」である。トワ・エ・モアが歌うそれも素敵だったが、知らない者同士が異国の地でたどたどしく歌うそれは少年の胸にもっと響いた。

 選手として私の胸をきゅいんとさせたのは誰がなんと言おうと伊藤みどりである。カルガリーにくるくる舞うガッツポーズとスマイルが。アルベールヴィルに伝わる緊張感と、土壇場での一瞬の勇気と決断と"その"直後の笑顔が。ううう。す、好きだよっ、あのときのみどりちゃ~ん。

 その伊藤みどりが観客席に座り、下を向いて記事か何かを書いていた「長野」。君のいない氷上はさみしい。君につづく存在が日本はおろか、どの国にもいないのが残念だったし。でもね、ここにきてようやく現れたのだ。安藤美姫というんだ。荒削りだけどいいんだ。

 ところでジャンプ陣のニューウェーブはどうした。耳について離れない原田の「ふ、ふなきぃ…」の鮮烈さで終わってしまうのか。そんなのヤだぞ。スピードスケートもそうだ。ロケット小僧清水のストイックさにも限りがあるというものだ。ノルディック複合も心配だ。がむしゃらに走りつづけ、ゴール後、雪上に倒れてぜぇぜぇあえいでた荻原のバトンは誰が受け取るというのだ。「ソルトレーク」は、だから何ひとつ印象に残るものがなかったじゃないか。

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