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愛を込めてオムニバス

 込める愛は誰に対して。
 そりゃ、この他愛もない本ブログを読んで下さる方々のため。あるいは特定の誰かのため。どっちなんだ。さぁねぇ。

 それにしても、今回の文章はいつぞや書いたものを下敷きにしている、というのが分かる方には分かるであろう。もうバレバレ。たはは。ちゅうか、そんなんばっかだ。ホントか。多分。もしかしたら。あるいは。どっちなんだ。さぁねぇ。

 このオムニバスは今からざっと10年前(1998年)に作ったものである。しかし、今聴いてもなかなかなもんであることよ。かかか。という自画自賛は、ウラを返せば、最近あまり音楽に熱中してないと白状せねばならないことを証明してみせている。ホントに熱気が薄れているのだ。ことに洋楽は。むしろ邦楽、にっぽんのシンガー達に最近耳を傾けている。てな話はまたいつか。


 1.I Got You (At The End Of The Century) / Wilco (1996)

 初っ端からウィルコでエンジン全開だ。食前酒なぞいらない。熱々のスープでなくちゃ。引き絞った旋律の上昇と下降を二度繰り返す明るく切ない間奏がこの曲の快感のツボだと思い込む私は、同じそれをどこかで経験している。Queenの1stシングル「Keep Yourself Alive」最後の間奏で昇りつめるBrian Mayのギター・フレーズだったかな。あるいは、Raspberriesの「Go All The Way」終盤に見せる初期ビートルズ的カタルシスだったかな。はっきり思い出せないのが悔しい。
 さて、その後のウィルコがどう進んだかはご存知の通り。「9.11」以降、逆に彼らは音楽的により深化してゆく。よりピュアになってゆく。


2. Emma J / Brendan Benson (96)
3. I'm Blessed / 〃

 エレギ無し、アコースティック・ピアノが飛び跳ねるBen Folds Fiveの潔さ、性急さは私をしばし虜にする。が、ギター禁断症状に陥るのは時間の問題だった。ぐげげげ。こうして彼らに飽きてきた頃、ブレンダン・ベンソンなる男に出会う。例えば、爽快感や潔さに溢れる「I'm Blessed」がベン・フォールズにダブるも、「Emma J」に流れる「湿っ」た空気は何なんだろう。「乾い」たアコギの単調な刻みに滑り込むつややかなアコギの暗い光沢は何だろう。
 彼の本質は収録アルバム『One Mississippi』にこそある。後に出た例えば『Lapalco』ではない。


  4. Loco Motives / Little Feat (98)

 使い古されたフレーズ、"ローウェル・ジョージのいないリトル・フィートなんか"。を、ふはははと笑い飛ばしてくれたアルバム『Ain't Had Enough Fun 』に続く『Under The Radar』はもはや完全無欠のフィートである。迷うことなく前進あるのみ、なスタンスの先に見えるのはかつてのフィートにしか産み出せなかったはずの泥沼じゃないか。大きな口を開けて笑いたい。最新作『Join The Band』にもこうした匂いが溢れてることを望む。


5. Pena De Vida / Pedro Luis E A Parede (97)

 ブラジルのぶっ飛び小僧ペドロ・ルイスの発するポルトガル、ポルトガル、ポルトガル語っ。が快感そのもの。初期The Policeも真っ青なバック陣のなりふり構わない重厚な爆発ぶりにも拍手っ。
 アルバム『Astronauta Tupy』、『E Tudo 1 Real』と来て、次はなんだっけ。てのは置いといて、最近の彼を私は知らない。変に落ち着いてないことを祈る。


6. Boxing / Bette Midler (98)
7. I'm Hip / 〃

 ヘビーな音を食らった後に待っているのは、アコ・ピアノが導くワルツの調べ「Boxing」。押さえた歌声はベット・ミドラー嬢。ボクシングをするにはぼくはもう歳を取り過ぎてるのさ、と思い込む主人公はハワードなる友人へと語りつづける。ときおり自分を思いきり殴ってみるのさ、と告白し、ボクシングは君にとって良かったかい、と問う「ぼく」に友ハワードは何と答えるのだろう。それをベットは歌わない。


8. Bleeding From A Scratch / Doyle Bramhall II (96)
9. Stay A While / 〃

 かつて私は彼のことを、その第一印象だけで、「ポール・ロジャーズを真似る70sのスティーヴィー・ワンダーの図」だと表現したことがある。ごめんよ。ドイル、きみの声はどれもが素敵だ。この2曲は今でも詩、メロ、アレンジ、ボーカル、どこをどう切ろうが切ない匂いに満ちている。
 と反省していたらば、きみは例えばクラプトンと一緒にいたり、ブルーズ臭をぷんぷん振りまいたりするんだね。きみのことを二度誤解していたことになるよ。でも、ぼくにはこの作品のときのきみが一番なんだけどね。


10. El Rayo-X / David Lindley (81)

 内側に向かった夜が明けたら、びゅーんと太平洋一周ってぇのはどうだい。もう30年近くも前の曲だけど、こうやって蓋を開ければいつだって風は吹いている。そういえばいつぞやお前が書いた「タイムカプセル」シリーズにも、アルバム『化けもの』が入ってたなんて野暮なことは言わんといて。昔のことは忘れた。はは。


11. Hand / Lois Lane (96)

 だめだ。何がって、遠くPrinceの糸と結ばれているこういう手合い。黙って聴かされたら、『Around The World~』や『Parade』を染め上げたWendy & Lisaの手がけたものだと信じてしまう。そうか。ドイル・ブラムホールIIもそうだったっけ。


12. Theme From The Bottom / Phish (96)

 放っておけば延々演奏を続けそうなエンディングはエンディングと呼べない。The Beatles「A Day In The Life」終盤がふとよぎるのは、不協和音を重ねながら感情を高ぶらせていくその手法が使われてるからかもしれないが、「ア・デイ~」がほぼ"完成"形であるのに対し、こちらフィッシュのブツは"未完成"とでも呼べそうな「開放」感がある。「不安」感から最も遠い位置で鳴っている。収録アルバム『Billy Breathes』を包み込む「とぼけ」た味わいはどこから来るのだろう。もう解散してしまった彼らではあるが、謎はいまだに解けないでいる。


13. Blue Lagoon / Laurie Anderson (84)
14. Sharkey's Night / 〃

 「わたし」は南国になぜ一人でいるのだろう。「わたし」はなぜ毎夜、一人で海に潜るのだろう。「わたし」はここで何を見ているのだろう。南国を舞台にしながらある種の冷ややかさが伝わるローリー嬢84年の『Mister Heartbreak』には、例えばこんな世界が扉を開けて待っている。今でも。


15. Let It Grow / Eric Clapton (74)

 ぼくは立ち止まってしまった。標識がある。ここから先、どの道をゆけばいいのか。その答えを読み取ろうとしている。あなたの愛を植えてごらん。あとは自然に任せて。育つがままに。晴れの日も。雨の日も。雪の日も。育つがままに。花をつけるがままに。育つがままに。…なんてシンプルなメッセージ。がしかし、いくたびこの詩や旋律が倒れたきみやぼくを抱き起こし、勇気づけたことか。いることか。いくことか。歌い始め直前のクラプトンのわずかな息つぎがこの曲に"命"を吹き込んでしまった。あれから35年が経っている。まったく色褪せない。


16. Edo River / Carnation (94)

 クラプトンの「Let It Grow」で終わるのが照れ臭かったのさ。このオムニバスは、にっぽんのバンドで締めるよ。森高千里の「夜の煙突」に見る情景描写の鮮やかさは彼らの手腕だったんだね。

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Comments

ふぅん…。Eric ClaptonのLet It Grow、そんなに名曲なんだぁ…。
手許のBestには収録されていないので(ごめんなさい)、調べて聴いてみました。
歌詞がとっても良いらしいですね。それは調べられなかったんだけど。

しかし、歌詞をよく理解していないにも関わらず、つかけんさんの解説を読みながらLet It Growを聴いていると、それだけでわかった気になるのはなぜだろう。

すごいです。
つかけんさんの説得力と、私の想像力が。

Posted by: 階下の貴婦人 | May 07, 2009 at 11:03

名曲かどうかはともかく、クラプトンといえばこれが第1位なのだどうだ文句あっかこの野郎、とすぐに答える条件反射が私には備わっているんですね。アルバム単位なら、これを収録した『461 Ocean Boulevard』がいっちばんじゃいやかましどついたろかぼけ、と叫ぶことにしています。なにしろ生まれて初めて買ったCDがこれですから。そりゃ刷り込みですか。そですね。どもども。

貴婦人さんがおっしゃる歌詞という切り口でこのオムニバスを見渡せば、「レット・イット・グロウ」の他に、ベット・ミドラーの「ボクシング」なら、短編小説を読んでいる、あるいは映画の1カットを見ている、てな感覚に陥ります。
ローリー・アンダーソンの「ブルー・ラグーン」なら、まんま詩ですよ。一つ一つのフレーズがあまりに短く、かつシンプルなので、想像力を掻き立ててくれます。絵が見えます。ちなみに彼女は歌っていません。語るだけです。シンガーというよりポエットですね。

Posted by: つかけん | May 07, 2009 at 21:04

オムニバスの締めの曲「Edo River」を拝聴いたしました。
時は夕暮れ、私はキッチンでコールスローサラダを作っておりましたが、計らずもこの曲はそういう時間にそういう料理を作りながら聴くのにぴったりでした。
たまに料理をしているシチュエーションとBGMがマッチするときがあって、そういう瞬間に出くわすとかなり幸せに感じる。
たいていは、聴いてるそばから、何の曲とどんな料理がマッチしていたか忘れていくんですけど(ただの健忘症じゃないのか)、これはめずらしく記憶に残っておりますです、はい。
みなさんも「Edo River」聴きながら、コールスローサラダを作りましょう。なんて。

Posted by: 階下の貴婦人 | May 20, 2009 at 04:57

カーネーションというグループに注目したのは、前述したように、森高千里の「夜の煙突」の、町を俯瞰するような情景描写を手がけた直枝政太郎の名から、です。
90年代初頭、突き抜けた、あるいは開放感あるロックはどこに行っちまっただ、おーい、とよたよた歩く私の前に続々現れたミュージシャンやグループの中に含まれていた数少ないにっぽんのバンドが彼らだったんですね。その弾む乾いたドラムス音や詩に漂うちょいととぼけた風味にさらりとした食感が私を振り向かせたのです。この肩の力の抜き加減ったら。

そうですか。コールスローサラダですか。ふーむ、さらっとしたサラダが見えてきますね。決してオイルにまみれたそれではなく。それはともかく、この曲の跳ねるリズムに乗りすぎて、くれぐれも手を切られることがなきよう(笑)。

Posted by: つかけん | May 23, 2009 at 14:56

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