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BOOKS 2008年の収穫・上

 しっかし、くどいんだよな書き方が。表現が。もっと削れるだろがここもあそこも。そもそも内容が支離滅裂だ。言葉遣いも明らかにおかしいぞ。間違いだらけじゃないか。ついでに、体言止め多すぎっ。
 でもまぁ、久しぶりのエントリーちゅうことで…。許してっ。


 <BEST1~4>

1 飯嶋和一  『出星前夜』

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 『神無月~』にしろ、『始祖鳥記』にしろ、あまり焦点を当てられていない史実や人物をすくい取ってきた飯嶋が島原の乱という有名故実を取り上げていることにちょいと面食らった。前作『黄金旅風』の主人公、長崎代官末次平左衛門が顔を出すところを見ると、その前作や取材を通して自身何かに触発されたのかな。元来「市井の人々対権力体制」という構図および市井側から描写するスタイルから鑑みて、実は本作こそが本流で、『黄金~』は支流だったのかもしれない。幹のない枝はありえない。

 それにしても、この広く知られる歴史上の騒乱を一体全体どういう切り口で描くのか。

 島原藩主松倉勝家の限度を超えた苛政に対し我慢を幾重にも背負った甚右衛門こと鬼塚監物がようやく堪忍袋の緒を切るまでが第一部、領民の蜂起と終焉までが第ニ部という構成である。にしてもだ、その緒を切るあたりの描写は分かりにくい。ゼウスの教え、キリシタンの宗教心に絡めた神秘性や荘厳さに包んでしまっていて、ちょっとした違和感を覚える。この物語唯一の不満がそこにある。

 島原の乱が単なるキリシタンの反乱ではなく、西国大名に対する締め付けや改易等、固めつつある徳川の幕藩体制そのものに原因を求める構図は分かりやすい。板倉重昌や松平信綱といった幕府上使の下知になかなか従わない、指揮系統が乱れる討伐軍の無様な敗退ぶりが細緻かつ生々しく描写された第ニ部は読み応え十分である。

 外崎恵舟なる長崎の町医者や、大蜂起の突端を担った中心人物寿安がその恵舟との縁から彼の助手になり命の尊さを学びながら「救」われていく姿など、乱を取り巻く脇役の一挙一動が粒選りでいい味出している。土壇場でとった寿安の"意外"な行動は彼の「生きる」前向きさを象徴するシーンとして、この悲惨な物語を最後に「救」っている。


2 乙川優三郎  『喜知次』

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 身分を越えた三人の友情や義理の妹への恋心という二本の太い線。そこに、青春時代からオトナへ進もうとも変わらぬ藩再建に対する小太郎の熱い思いが綴られていく。強烈に跳ね返してくる世の常に抗い、抗い、また抗う。

 花哉(かや)という名のもらわれてきた妹との淡い心の繋げ合い。小太郎にたった一度頼んだ川原の丸い小石2つを、花哉はこしらえた2つの布袋に入れ、にっこり笑いながらその一つを小太郎に渡す。お守りだといって。ここで作者は大きな伏線を張っている。なんだか大河ドラマで見た幼い篤姫と尚五郎(後の小松帯刀)のやりとりを思い出させた。

 小太郎は、派閥抗争に明け暮れ下々のことを忘れる藩の在り様に反発を覚え、執政を目指すのだが…。

 ようやく藩が落ち着き出した物語終盤、唐突に言い渡される遠い西国への「転封」。花哉との別れ。やがて知らされる小太郎、花哉、両親、この三者の本当の家族関係。時は、しかしどんどん流れていく。止めようはない。20年以上も経っただろうか。故郷に一時帰国した小太郎を待っていたのは…。手にしたのは…。まったくやってくれるぜ乙川優三郎ワールド。予定調和なんてないんだねいつだって。なんて切なく、いじらしく、美しく、香り立つエンディングを用意するんだ。ここからまた歩いていくのか。

 「喜知次(きちじ)」とはある魚のニックネームであり、小太郎が幼い頃の花哉につけたもの。作者がなぜこれを本書のタイトルに使ったのか。それに気づいた瞬間…、くそっ、込み上げてきちまったじゃないか。

 後戻りのきかない無常観に胸塞がれながらも、人の強さにそっと包まれる一品とはこういうものを指す。


3 浅田次郎  『中原の虹』

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 これは昨年1月に読んだかな。もう忘れたぞ細かな内容。確か『蒼穹の昴』の"続編"として描かれていたような…。ちゃんとメモしとけよつかけん。

 張作霖といえば、ああ満州鉄道で爆殺された人だね、程度な認識しか私は持っていなかった。この作品では、清朝終焉期にあってその名を地元満州はおろか、中国全土?に轟かせる大親分として描かれている。縦横無尽に荒野を駆け巡り、戦い、名だたる政財界や軍の強者どもと渡り合うその姿は全満州人の英雄である。ジャック・スパロウである。織田信長である。平将門である。

 とにもかくにも浅田次郎のパワーは計り知れない。『蒼穹の昴』で見せた渾身のペン先は全く乾くことなく、新しいインクをほとばしらせた。緻密かつがっしりした骨組の上に乗りながら、大風のようにこの作品を走らせている。わくわく感を最後まで保たせる、これこそ至高の娯楽作品と呼ぶにふさわしい。


4 和田竜  『のぼうの城』

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 最新作『忍びの国』は肩透かしだった。それもこれも『のぼうの城』の魅力にすっかり参ってしまい、次作に期待しすぎたせいだろう。

 このデビュー作は最初ちょろちょろ、中ぱっぱ…。違うぞ。序盤はかったるいが、中盤、でく「のぼう様」と呼ばれる成田家城代の息子、長親が何万という軍勢を従えた石田三成との一戦を決意するくだりから終盤まで一気読み。現在の埼玉県行田にあたる水郷地帯に立つ森の様相を呈する忍城(おしじょう)を舞台に、秀吉の小田原攻めの一環、各地の支城落としのやりとりが手に取るように伝わってくる。百姓からも「のぼう様」と言われ、愛されるこの愚昧な武将が「開城やむなし」を翻し、総大将にならざるを得ない理由が単純であり、誇り高い。なにを考えているのか分からない風貌やのろまでぐずで"弱虫"な一挙一動との落差がすごい。三成の水攻めによって広く深く貯まった水上に一人舟を漕ぎ出すくだりは圧巻である。三成軍に敗れなかったおよそ凡人には一見想定外で虚を突く行動を起こすこの「のぼう」が真の「名将」なのでは、と家臣達や三成は次第に気付くが、本人は無頓着このうえない。百姓や領民を尋常でない本気さで愛するという一点で行動する彼は、かつて描かれたことのない武将像である。

 ことごとく落とされた小田原北条家の支城にあってただ一つ落とされなかった城として忍城は記録にも残されている。現在、城は一部?再建されたが、周りにあった川や沼や湖は埋め立てられ水城という当時の名残をとどめていない。三成が秀吉を真似て作った石田堤(水攻めで忍城を落とすのに作られたおよそ28Kmにも及ぶ史上最大のもの)の一部はさすがに残っているらしいが。

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