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80年の周辺 4

 ■ピーター・ゲイブリエルに刻まれる

Gabriel
 エレファントカシマシほどではないにせよ、今年出会い、よく聴いた中にGenesis70年代後半のアルバム群がある。実はここまで知らんぷりを決め込んでいたのだ。不覚だなや。例えば『A Trick Of The Tail』の気品とスリルの両立に出会うまでどれくらいかかった。…30年か。阿呆だなや。

 んにゃ、70s前半のジェネシスすらまともに聴いていなかったんじゃないか。そうなのだ。ジェネシスより先に体験し、ヤラれたのはPeter Gabrielの方だったはずだ。どんなきっかけでアルバム『III』(80)に出会ったのか今となってはもう忘れてしまったが、一度目にしたら二度と忘れられないジャケともども、私の脳の奥深いエリアにざくざくと刻みつけてきたのはピーターなのである。

 1曲目のイントロは、これはなんだ。錐か。のみか。それともドリルか。まるで無関係なはずのVan Halenにまで影響を与えたんじゃないかと思わせるこのキリキリキリ…ちゅう音ったら。Steve Lillywhite仕込みのドラムス音が放つのはアルバム全体を覆う暗い光沢。リズムの重量感。脳をえぐるリズムだ。非コマーシャリズムだ。なんでこの作品を気に入ってしまったのだろう。聴き手のイメージを膨らませるナニモノカがあったのかいな。ロックが見せた世界の、しかし一つには違いない。誰のそれにリンクせずとも。

 ところでピーター、いくら老いたとはいえ歌ってほしくはなかったなコマーシャリズムに支えられた2006年冬の祭典で。見たくはなかったな「イマジン」を歌う君を。君が歌うのは「ビコ」だ。何。昔の南アフリカじゃないとな。雪と氷の北イタリアならまったくの場違いってか。だからって「イマジン」を歌うこたぁないだろう。


 ■スティーヴ・ウィンウッドに揉みほぐされる

Winwood
 どうやら私はジャケットに弱い。ジェネシス同様、Trafficも未体験のままSteve Winwoodの方を先に手に取ることになるのはアルバム『Arc Of A Diver』(80/81)ジャケの構図に惹かれた、それが理由の一つには違いない。ピーター・ゲイブリエルの『III』がそうであるように、試聴もせず次々と「決めた」のはただひたすらアルバム・ジャケの出来映えにかかっていたのだ。いい加減ってか。いやいや、外れないのだこれが結構。

 スティーヴはほぼ一人でこれを仕上げたらしい。そのせいかどうか、こじんまりとまとまっている。種々様々な器材を駆使しているだろう割には、ほのぼの、くぐもった音や声が流れ続ける。まるで渋茶のような音楽である。こんなん聴いていると団子とか饅頭なんかを口に放り込みたくなるのだ。ぱっと思いつくのが袋井は法多山の厄除け団子。伊勢はおかげ横丁の赤福。文明堂のカステ…。…本当に食いたくなってきた。


 ■XTCに叩きつけられる

Xtc
 『English Settlement』の帯に確かこんなコピーが添えられていたと思う。「薄氷の裏側に潜む冬の魚のような音楽。それはポリスに優るとも劣らない…」。ポリスだとぉ。その名を出されたら無視するわけにはいかないだろがぁ。初歩的な販売戦略にまんまと引っ掛かってしまう当時の私は純である。が、結果オーライとはあるものだ。これは「大当たり」だったのだ。1等や2等なんかじゃないよ。特等だよ旦那。からーんからーん。アリスの不思議な英国ツアー6泊7日ペアー・チケットだよお嬢さん。一緒に行かないかい。まぁポリス云々はともかく、「薄氷の裏側に潜む…」のくだりはまことに言い得て妙である。彼らXTCと私のつき合いはここから始まったのだった。

 こうして前作『Black Sea』(80)にたどり着く。『イングリッシュ~』ほどの衝撃は無かったものの、もしこちらが先だったら分からない出来栄えである。いくぶんハードながらもポップでひねくれている。ここにもスティーヴ・リリーホワイト料理長によって仕込まれたドラムス音がダンダスパスパと響く。タイコだけじゃない。どの楽器もあるときは斧のように振り降ろされ、あるときは居合抜きのようにすぱっと切れ味鋭い。ポップな味付けは70年代というより、60年代だなや。


 ■アルバム80エトセトラ

Women And Children First(暗黒の掟)』 Van Halen
Never For Ever(魔物語)』 Kate Bush
Second Of Pleasure』 Rockpile
Voices』 Hall & Oates
Zenyatta Mondatta』 The Police
Dirty Mind』 Prince
4』 Foreigner


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Comments

こんばんは、毎度聴いてない自慢のSYUNJIです。
今回の3アーチスト、いずれも当然聴いてないのですが、気になったのはXTC。
つかけんさん同様、ポリスの名に反応してしまいました。
大当たりとの評価ですが、XTCって「ポリスに似てる」わけではないんですよね・・?

Posted by: SYUNJI | Sep 30, 2006 at 21:35

 ポリスには思い入れがありそうですねSYUNJIさん。彼らの2ndについてそのうちエントリーする予定ですので、思いきり突っ込んで下さいね。ってもあくまで予定ですからね(笑)。

 XTCとポリスですか。いわゆるニューウェーヴ絡みで紹介されてたことを除けば両者の共通点を見つけることはきわめて困難です。
 レゲエだの非欧米リズムだのを消化しつつ独自の切り口でロックンロールの地平をごりごり行進したポリスに対し、XTCにはその初期を別とすれば、シド・バレット(@ピンク・フロイド)ばりに狂気と紙一重の世界に飛んでいっちまいそうで困るアンディ・パートリッジの袖を他のメンバーが引っ張る図というのがあり、その危ういバランスから生まれるちょいとひねくれたポップ臭とイングランドの森の香りが歯切れのよいリズムに合わせて私を酔わせるんです。うい~っす。SYUNJIさんも一杯いかが。

Posted by: つかけん | Oct 01, 2006 at 18:20

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