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マイ・オムニバス VOL.30 後

【空に浮かぶ70年代最終版】 77~79年 6/6

11 ドリーム・ポリス / チープ・トリック
12 ブギー・ワンダーランド / アース、ウィンド&ファイヤー
13 エスケイプ / ルパート・ホルムズ
14 レッツ・ゴー / ザ・カーズ
15 恋するチャック / リッキー・リー・ジョーンズ
16 オネスティ / ビリー・ジョエル
17 翔んでるレディ / ダイアー・ストレイツ
18 言い出せなくて / イーグルス
19 ウェイト・フォー・ミー / ホール&オーツ
20 孤独のメッセージ / ザ・ポリス

 80年代突入前夜。リアルタイムで出会うことなく、あるいは出会っていたはずなのに少年のそばを通り過ぎていった曲々。70sマイ・オムニバス最終回のブツはそのほとんどがそうだ。チープ・トリックの「ドリーム・ポリス」を嬉々として聴かせる二つ下の後輩をがっかりさせたくなかっただけさ。いいねこれ。と少年がウソをついたのはそれが理由だったんだ。ごめんよ。もう洋楽にはおさらばしているのさ。ロックなんかどこにあるんだ。ないじゃないか。ホール&オーツがブレイクしてるとな。知らない。ポリスがなんだって。お子様御用達に用はない。

 こうして見過ごしてしまった洋楽たちを、しかし彼は80年代に入って後追いすることになる。数年先のそんなおのれの慌てぶりを予想できるわけがなかった。

 チープ・トリックの『@ブドーカン』にはハマらなかったが、1stアルバムにはヤラれた。「The Ballad Of TV Violence」を何度聴いたことだろう。あるいはダリル・ホール&ジョン・オーツの楽曲一連から流れるエレクトリカルな軽薄ドラムス音に耳を塞ぎながらも、「プライベート・アイズ」たった1曲に足を引っ掛けられてからはもうダメなのだ。いやよいやよも好きのうち。惚れてしまったら最後、今までのこだわりなぞきれいさっぱり消え、水を吸い込む砂のようにこのデュオを聴き漁った。恋の、もとい鯉のさかのぼりなのだ。こうして「ウェイト・フォー・ミー」に出会う。

 ザ・カーズの「レッツ・ゴー」だって同じようなもんだ。80年代を席巻したビデオ・クリップ集の中で追体験した。リック・オケイセクではないメンバーの一人が死んだ魚のような目でクールに歌っている。そのクールさに不似合いな汗を垂らしながら。なんてことはともかく、楽器の音やボーカル、掛け合いの一つ一つが絡み合い、これが定石だと言わんばかりの展開を見せ、快感のツボを押す。小癪な連中である。彼らのシングルはどれもこれもが同じツボを押す。計算か。天然か。謎である。

 70年代のたそがれは洋楽の、ロックのたそがれ。次々登場してくるまがい物のロックに辟易としていた耳に新鮮だったのがビリー・ジョエルであり、新生ボズ・スキャッグズであり、ルパート・ホルムズである。ルパートの「エスケイプ」はアレンジこそ時代を感じさせるものの、メロディーは今でも非凡だ。だがメロディやコードワークの心地良さだけに耳を傾けてはいけない。ストーリーの展開が負けず劣らず絶妙なのである。まるで短編小説を読み、映画を見ているようだ。そもそもルパートが紡ぐ詩の数々は甘くない。ときに辛辣、ときに軽妙、ときにひねくれ、ときにユーモラスだ。普遍なのである。このあたりは当時のにっぽんのいわゆるニューミュージックに引けを取らない。収録アルバム『パートナーズ・イン・クライム』を例に挙げれば、「Nearsighted」なんてそのまま「近眼」というタイトルで吉田美奈子が歌っていそうな愛の歌だし、「Lunch Hour」ならユーミンやハイファイ・セットが歌っても全く違和感はない。「Him」だったらさしずめ中島みゆきかさだまさしだな。留守電を使ってプロポーズのやりとりを描写した「Answering Machine」はラブソングに引っ掛けた当時の社会に対する皮肉かな。これは誰がいいだろう。「Get Outta Yourself」はすべての現代人に贈る愛の歌、というより、口幅ったいけど人生の歌。軽く流しているけど励まされる。重くないから余計に。これは財津和夫にでも。

 という訳で、70年代マイ・オムニバスはこれにて終了。お疲れ。

 さて、ここから先どうしよう。なに。80年代に進めってか。ってもオムニバスを作ってないしなぁ。そもそもストックがないぞ。

 …まぁ気が向いたら。


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Comments

こんばんは。
このあたりから自分がリアルタイムなんですが、終了ですか・・残念。

チープ・トリックのブドーカンは姉が実体験しています。
カーズの「レッツ・ゴー」、リックでないボーカルはベンジャミンですね。
残念ながら数年前に亡くなりましたが、クールなボーカルはリックよりも好きでした。
「エスケイプ」の評価が素晴らしいです。
ストーリー展開は確かに非常に都会的でオシャレですね。

いやーそれにしてもつかけんさんのBLOG、軽妙かつおだやかな語り口で、なんというか昔の深夜放送のような心地よさです。

Posted by: SYUNJI | Jul 28, 2006 at 00:01

 そうか。SYUNJIさんはこの辺りなんですねリアルタイムの始まりが。だったらここからバトンタッチして下さると私はサボれて嬉しい(笑)。
で、80年代についてもぼちぼち書いていこうとは思ってますが、思ってるだけです。って、ストックが本当に少ないんですよ。プリンスとXTCくらいかなぁハマったのは。こいつらを含むその他の面々についてはウソと想像とハッタリで塗り固めるしかありません。むはは。もしものときはフォロー願いますね。

 カーズのシングルで一番好きなのは今回取り上げた「レッツ・ゴー」なんですが、ビデオ・クリップでヤラれたのは「ドライブ」です。っても登場する精神に異常をきたしたかわゆい女の子の演技に、なのだけどホントのこと言うと。はは。まったく役者ですね彼女は。わずか数秒で笑顔から泣き顔にくずれていくシーンを覚えていますか。あれは鳥肌もんです。

Posted by: つかけん | Jul 29, 2006 at 16:50

僕は20歳。けれど、それが人生で一番美しい齢だなんて誰にも言わせない…だっけ?

最後の青春こぼれ話が面白かったな。ちょっと切ないんだけど、やっぱり単純で(笑)。
男心を見た気がしました。

Posted by: 階下の貴婦人 | Mar 05, 2009 at 11:54

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