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マイ・オムニバス VOL.29 前

【ペグは彩を救う】 77~79年 3/6

01 ドリームス / フリートウッド・マック
02 フォトグラフィック・スマイル / ミスター・ビッグ
03 ニュー・キッド・イン・タウン / イーグルス
04 ショート・ピープル / ランディ・ニューマン
05 ラブ・ガン / キッス
06 甘い罠 / チープ・トリック
07 マネー・マネー・マネー / アバ
08 ロッキーのテーマ / ビル・コンティ
09 麗しのペグ / スティーリー・ダン
10 宇宙のファンタジー / アース、ウィンド&ファイヤー

 同名異曲は数々あれど、同じ名前で別のミュージシャンというとどんな名が思い浮かぶだろう。イーグルスとイーグルス。ニルヴァーナとニルヴァーナ。ジェイムス・テイラーにジェイムス・テイラー。「テイラー」といえばもう一組ロジャー・テイラー(@クイーン)とロジャー・テイラー(@デュラン・デュラン)も。よく知られたボビー・コールドウェルにあまり知られていないボビー・コールドウェル。有名なジャイアンツと有名なジャイアンツ。…ちがうって。

 で、今回登場のミスター・ビッグである。80&90年代というステージをうるさく走りまわるその名を全く無視していた私にとって、ミスター・ビッグとは70年代後半に忽然と現れ、いつのまにか消えていった英国のバンド名のことである。それ以外にいたか誰か。知らないぞ。

 非凡なメロディ・メイカーを擁したがゆえに、いわゆるプログレッシブに切り刻まれ、ハード&ヘヴィに炒められてあっても、彼らの作品は甘味である。色とりどりな焼き菓子を思わせる。ポップなのだ。チャーミングなのだ。1stアルバム『Sweet Silence(甘美のハード・ロッカー)』に収録されたなんで突然中華風味やねん、な「麗しのザンビア」のこそばゆさは今思えば序の口だ。2nd『Mr. Big(フォトグラフィック・スマイル)』から飛び出す「フォトグラフィック~」、「恋するロミオ」、「ルイジアナ・ストリート」、「故郷への慕情」、「恋の誘惑」…あれやこれや。いやぁ、もうたまらんわ。どいつもこいつも口ずさみたくなる。聴き手を決して飽きさせないよう計算ずくのアレンジを施しながら激しくたたみかけてもくる。ロック・ボーカリストの喉とはまず呼べない線の細さを差し引いても十分お釣りがくるとはこのことだ。引出しの隅でホコリをかぶっていた宝物だこいつは。


 「麗しのペグ」がシングルカットされたことなど、チャートを追わなくなっていた少年には知る術もない。アルバム『Aja』の中で出会ったにすぎない。そんな瑣末なことを抜きにしようが、あるいはマイケル・マクドナルドのハイ・トーンがうるさかろうが、しかし間違いなくそのアルバムのベスト・チューンである。

 ジェイ・グレイドンが見せた間奏のギター・ソロは、前作『~摩天楼』1曲目「滅びゆく英雄」で渾身のスリルを見せつけたラリー・カールトンのソロ同様、一世一代と呼ぶべきものだ。それでいいじゃないか。十分じゃないか。余計な紹介なんかするんじゃないよ。数多のギタリストが次々に撃沈しただの、だからジェイだけが彼らに選ばれただの、なんて尾ひれをつけるんじゃないよ。権威付けするんじゃねぇよ。「あのスティーリー・ダンが…」の「あの」がその象徴だ。匂うぜぷんぷん。

 ところで「麗しのペグ」。この曲がなければ『Aja』は聴くに耐えなかっただろう。ぴりりとしたこんな小品でA面もまとめていれば救われたのにこのアルバム。だいたいなんだA面に並ぶ長尺の3品は。洗練自体はいいが、過度の洗練から生まれる妙なくつろぎ感の息苦しさはなんだ。スティーヴ・ガッドのドラムスがあんなに耳障りなのはその異様なくつろぎ感のせいだ。

 私の大切なスティーリー・ダンは、ファンクかました前作『~摩天楼』を頂点とした彼らを指す。なんて話はいつかまた。…いつだよ。


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