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マイ・オムニバス VOL.28 後

【投げられたビール瓶】 77~79年 2/6

11 伝説のチャンピオン / クイーン
12 素顔のままで / ビリー・ジョエル
13 アナーキー・イン・ザ・UK / セックス・ピストルズ
14 ジェット・エアライナー / スティーヴ・ミラー・バンド
15 ハード・タイムズ / ボズ・スキャッグズ
16 ノウイング・ユー・ノウイング・ミー / アバ
17 イッツ・ソー・イージー / リンダ・ロンシュタット
18 バラクーダ / ハート

 映画『ブルース・ブラザーズ』。最後の最後まで笑わせてくれるこの作品の中に確かこんなシーンがあった。酒瓶やらグラスやら食い物やらフォークやらを酒場に集う飲み客達から一斉に投げつけられるブルース・ブラザーズの図。R&Bを演奏したというただそれだけでこの仕打ちだ。雨あられ。なんで。あのなぁ、この辺りはカントリー演ってりゃいいんだよ。こてっこてのカントリーをな。酒がまずくなるじゃねぇか。訳分かんねぇ歌聞かすんじゃねぇよ若いにいちゃん達よぉ。南部だぜここは。

 独特のコメディですくい取ったこのアメリカ南部気質にリンクするいわゆる保守主義は、『イージー・ライダー』の主役をラストシーンでバイクもろとも吹き飛ばしてしまった。こちらはコメディではもちろんなく、硬派な文学的手法で。

 まぁ両者ともに映画ではある。しょせんフィクションだ。

 ならば、セックス・ピストルズが強行したアメリカ南部のツアーは、これはなんだ。フィクションか。いや違う。事実である。ステージにびゅんびゅん投げられたビール瓶は本物なのだ。実際、ツアーはイギリスからの殴り込みとしかいいようがあるまい。この保守層でがちがちに固められたエリアにしてみれば。しかしなぁ、金払ってわざわざビール瓶投げに行く方も行く方だが、それでもなおステージ上で演奏し続ける方も続ける方だ。一体なんなんだこのツアーの無謀さは。その無謀さこそマスコミを巻き込んだしたたかなプロモーションだとでもいうのか。"アンチ・キリスト"だの"アナーキスト"だの、少ない持ち歌には、しかし日々の暮らしを穏やかに過ごしたいと願う地元のおじちゃんおばちゃん達を180度ノケゾらせるフレーズが散りばめられている。単純極まりないコードに乗る演奏の音量は暴力的スケールだし。演奏する若者はとんでもない格好してるし(笑)。

 さて、「アナーキー・イン・ザ・UK」を歌ったピストルズをはじめ、いわゆるパンクと呼ばれた連中が抱える自己矛盾はやがて彼らを破綻させることになるのだが、時代に向かって投げつけずにはいられなかった熱い塊はビール瓶の比ではなかったと改めて思う。70年代後半、ビジネスというがちがちの囲いの中に取り込まれてしまったロックがそれでもロックであり続けようとした証であると思ってあげていいんじゃないか。業界側に身を置いてしまった彼らの自己矛盾を差し引いても十分。

 それはともかく、アルバム『勝手にしやがれ!!』初っ端に飛び出す「さらばベルリンの陽」は秀逸だ。カッコ良すぎる。響く軍靴の群。マックスでたたみかけてくるドラムスにギターにベース。べえべえ吐き出してくるジョニー・ロットンのひしゃげたボーカル。ボーカルを追いかけ続けるバックの掛け声。「アナーキー~」や「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」の悪態ぶりもいいんだけど、この「さらばベルリン~」の方に引き込まれたんだ私は。最高のロックンロールである。


 という訳で、長かった下積みから突如スポットライトを当てられたイタリア系アメリカ人、ビリー・ジョエルの紡ぐメロディの非凡さや、息継ぎも生々しく旋律を引きずるような歌いまわしにこちらが引きずられたスティーヴ・ミラーの「ジェット・エアライナー」や、キャンパスにそびえ立つ校舎のてっぺん両端に据え付けられた巨大スピーカーから頭に打ち下ろされるボズ・スキャッグズ「ハード・タイムズ」の重量感や、書きたかったその他もろもろのあれやこれやは、このくどい書き込みの長さの前ではもうどうでもよくなってしまうのだった。ぜえぜえ。ビール瓶…もとい、サジ投げた。


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