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マイ・オムニバス VOL.27 前

【無人島の1枚】 76年 7/8

01 ジョリーン / オリビア・ニュートン・ジョン
02 雨の日のニューヨーク / シカゴ
03 ラブ・イズ・ブラインド / ジャニス・イアン
04 幸せのノック / ポール・マッカートニー&ウィングス
05 16小節の恋 / スタイリスティックス
06 シェイク・ユア・ブーティ / KC&ザ・サンシャイン・バンド
07 君を求めて / ピーター・フランプトン
08 二人だけのデート / ベイ・シティ・ローラーズ
09 ラブ・トゥ・ブギー / T.レックス
10 回想 / スティーヴィー・ワンダー

 「16小節の恋」だと。洒落てんなぁ。原題にほぼ忠実だとはいえ、いい加減な邦題がまかり通っていた当時の洋楽にあってこれは粋だ。その粋にケチをつけるのはそれこそ野暮というものだが、「16」ではキリが良すぎやしないかい、とちょっと言ってみたくはなる。って、17小節目に転調が待っているのが見え見えではないか。「16」では予定調和だ。想定の範囲内だ。予想をくつがえす、想定外の展開を見せるのが恋というものだろが。でもまぁ76年シングル邦題ベスト1はこれに決定だな。えーと、楽曲そのものは…。スタイリスティックスのファルセットは…。えーと、えーと…。


 LP2枚+EP1枚。この変則さは時代が彼に追いつけなかった証左である。CDの普及は数年先だ。スティーヴィーが貯め込んだ音楽のマグマは時代を待っていられなかった。変則であろうが構うもんか。もう誰にも止められない。『心の詩』あたりから始まった火山性地震は数をかぞえ、ついに大噴火したのである。『Songs In The Key Of Life』。溢れ出るマグマは吹田のアパートで寝転がっている少年の元に3日間流れ続けた。FM大阪を通して。初日はLPの1枚目。翌日は2枚目。3日目にはEPの1枚。全21曲から成るこの作品はもしやその何倍もの曲数を用意していなかったか、と思わせるに十分な質の高さをどの曲にも保たせている。「回想」も例に漏れない。スティーヴィーのほとばしる音楽の才は間違いなくここに頂点を極めたのだ。このアルバムがなかったら『トーキング・ブック』が…、『インナーヴィジョンズ』が…、『ファースト・フィナーレ』が…。

 それにしてもだ。シンセやらなんやらの機材を駆使したきわめて人工的な音世界なのに、どうしてこんなにぽかぽかしているのだろう。どうしてこんなに不安や焦燥を洗い流し、鼓舞し、励ますのだろう。「Love's In Need Of Love Today」で幕を開け、「Easy Goin' Evening」で閉じるこのワンダー・ワールドは私にとっていわゆる無人島の1枚である。南太平洋に浮かぶそれであろうが、極北の厳寒に閉ざされたそれであろうが、はたまた脱出不可能な流刑先であろうが、どんな条件下にあっても耐えられるアルバムはこれをおいて他にない。

 ただしだ。流れから浮いている「愛するデューク」、「可愛いアイシャ」、「ブラック・マン」の3曲は外すかもしれない。「~デューク」と「~アイシャ」はそれだけで立派に独立しているし、「ブラック~」は途中から繰り返し挿まれる教師達のヒステリックさに閉口させられるし。

Wonder_key


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