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眠れぬ夏の夜のために

 例年のことだとはいえ、毎夜毎夜なんでこうも蒸し暑いのだ。思いきって日本中のエアコンを一斉に止めてみたらどうだ。絶対涼しくなるぞ。ここはいっちょ内閣として夜間冷房禁止関連法案でも国会に提出したらどうだろう。旧通産族議員の烈火のような抵抗を免れまいが、そこはそれ、参議院で通らなかったら衆議院解散してやるもん、と脅しながらウチワ片手に涼しい顔をしていればいいのだ。

 さて。

 学生時代、バンド仲間との練習が終わって下宿に戻ったある夜中のこと。まじめなつかけんは一人ギターをケースから再び取り出し、そろそろ火照りが収まってきていた左手の指にもう一度熱くなってもらうことにした。時刻は0時をとうに過ぎ、1時近かったと思う。

 一通りの"復習"を済ませた私はたった今吹き込んだ音にヘッドフォンでじっと聴き入っていた。カセットテレコである。うん、なかなかいいじゃないか。

 封を切った真新しいテープには私一人のボーカルとギター。この2つが録音されている。いや、2つしか録音されていなかったはずである。

 「なんだこれ」
 ヘッドフォンを耳に当ててから数分後、私は生まれて初めて「そのような」類の■■■■を経験することになる。

 気がつけば、自分一人しかいないはずの部屋を飛び出した私は、もうとっくに寝ていた先輩を叩き起こしに下の階へと一目散。寝ぼけ眼で怒り出そうとした先輩もたちどころに事態を察し、二人で私の部屋に向かう。もちろん私は先輩の後ろからついていくだけ。見れば部屋の入り口ドアは開けっ放し。部屋の中はヘッドフォンが床に投げつけられたまま。そして件のテープを収めたカセット・テレコはしっかりとそこに。

 もうすっかり目を覚ましている先輩の表情は恐さ半分、好奇心半分てなところか。私がしたのと同じようにヘッドフォンを耳にあて再生ボタンを押す。少し経ち、停止ボタンを押してテープを少し巻き戻す。もう一度再生ボタンを押す。やおらヘッドフォンを外した先輩はこちらを向いた。
「………」
「聞こえました?」
「うん、確かに聞こえるな。息遣いまで」
「ね、ね。ホントでしょ」
「俺の田舎でやってた魔除けがあるんだよ」
こう言うと先輩はその辺にあった紙に「封」とかなんとかの漢字をサインペンでさらさら。それをカセットテープを納めたケースに巻き付けてセロハンテープで止めた。
「よし。これで大丈夫」

 その後、私が先輩の部屋に泊めてもらったことはいうまでもない。あんなんで効くのかなぁ。そんな思いが頭をかすめたが、何もしないよりはマシだと言い聞かせ、その夜はぐうぐう眠ってしまったとさ。おしまい。

 一体何がそのテープに録音されていたのか。 ─さあねぇ。
 その後テープはどうなった。今も手元にあるのか。 ─どうだろねぇ。

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Posted by: みんなのプロフィール | Aug 04, 2005 at 11:16

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