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マイ・オムニバス VOL.26 後

【巨石に気づく】 76年 6/8

11 想い出のメロディ / アルバート・ハモンド
12 青春の輝き / カーペンターズ
13 ミスター・メロディ / ナタリー・コール
14 愛はそよ風 / ベラミー・ブラザーズ
15 愚か者の涙 / ローリング・ストーンズ
16 ショップ・アラウンド / キャプテン&テニール
17 ガット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ / ビートルズ
18 恋のデュエット / エルトン・ジョン&キキ・ディー
19 ラスト・チャイルド / エアロスミス
20 アフタヌーン・ディライト / スターランド・ボーカル・バンド
21 ラブ・ミー・ライク・アイ・ラブ・ユー / ベイ・シティ・ローラーズ


Stones_black
 ストーンズと聞いて出てくるのは「悲しみのアンジー」ただ1曲だった。彼ら屈指の叙情を漂わせるその作品はしかもお好みでないときたもんだ。んで、ラジオから流れ出てくるストーンズといえば、いにしえの「黒く塗れ」だの「サティスファクション」だの…に違いないが、これもこれで少年にとっては味も素っ気もなかった。両手ですくうそばから指の間をさらさら流れ落ちていく砂のような。初めてアルバム『It's Only Rock'n Roll』をエアチェックしたときは「エイント・トゥ・プラウド・トゥ・ベッグ」なんかにそそられたもののすぐに飽きてしまった。思えばエアチェックという行為そのものに満足していただけなんだろう。

 私のリアルタイムにストーンズという樹木はまるで育っていなかったことになる。『ベガーズ・バンケット』に始まり『メイン・ストリートのならず者』頃終わる快楽の泥沼を知らないまま時は流れていたのだ。

 ところでFM大阪というラジオ局が流し少年がキャッチした電波の中に、初めてその凄さを知らしめ、慌てて後追いを始めさせたいくつかのミュージシャンやグループが含まれている。『キー・オブ・ライフ』のスティーヴィー・ワンダーや『幻想の摩天楼』のスティーリー・ダンあたりがその筆頭だ。そこにストーンズが加わったのである。アルバム『ブラック・アンド・ブルー』の衝撃ったらなかった。この作品との出会いがなければ樹木は枯れていたのだと思う。なんだこの音。なんだこいつら。なにをしていたんだ今までオレは。1曲目「ホット・スタッフ」のイントロで幕を開け8曲目「クレイジー・ママ」最後のリフで下ろす。この42ミニッツ・フルコース料理に舌は大鼓を打ちまくるしかなかった。隙間だらけな、というか、間が作り出す曲の力強さったらない。同じフレーズ、コードを繰り返すその単調さゆえに生まれる空気のうねりったらない。楽器から解き放たれる音ひとつひとつの色っぽさったらない。あらゆる無駄を捨て去った後に残った黒と青だけで獲得したこの音世界に捨て曲は全く見当たらな…。あ、いや、一曲あったんだ。おろかものっ。

 そうなんだ。今回収録の「愚か者の涙」はそのイントロが始まっただけで腰を引かせてしまうのだ今も私の。なぜだろ。ミックじゃなくキースに歌わせればよかったのか。あのファルセットを外せばよかったのか。よく分からない。ロッド・スチュワートの「セイリング」がなぜ苦手なのか説明できないように。はい、スキップ、スキップ。


 ナット・キング・コールの娘という紹介は何の意味も持たせず、ただただ彼女の空を駆け回るようなボーカルの奔放さと腰の入ったパンチに参ってしまっただけのことだ。それだけのことだ。最後まで息をつくことを許さず聴き手を鷲づかみしたまま持ち上げたり引っ張ったり…はぁ、もう好きにしておくれ。負けたよ君にはナタリー。タイトルも決まりすぎだぜ「ミスター・メロディ」たぁ。

 大橋純子の「シンプル・ラブ」にこれと同じナニモノカが流れていることを知るのはそう先のことではない。そういや大橋純子が一番きらめいていたのはこの初期だったな。美乃屋セントラル・ステイションを従えていたときの。…ちゅうのは関係ない話だが、少年はそろそろにっぽんのミュージック・シーンに目を向け始めていたのだったこの頃。チューリップ、サディスティック・ミカ・バンド、四人囃子という下ごしらえを経て、決定的なハイファイ・セットに出会うまで数ヶ月。少年は発酵を始めていた。

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