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マイ・オムニバス VOL.20 後

【HOME】 75年 4/10

10 悲しき願い / エリック・バードン・バンド
11 オンリー・イェスタディ / カーペンターズ
12 ダーク・ホース / ジョージ・ハリスン
13 スタンド・バイ・ミー / ジョン・レノン
14 そよ風の誘惑 / オリビア・ニュートン・ジョン
15 レゲ・ウーマン / スティーヴィー・ワンダー
16 フィラデルフィア・フリーダム / エルトン・ジョン
17 グッド・ラヴィング / バッド・カンパニー
18 ロックンロール・オールナイト / キッス

 アニマルズで名を成した「朝日の当たる家」はジョーディーのカバーに飲み込まれてしまった。それを黙って見ているだけのおまえでいいのかエリック。てな内なる声に突き動かされたか。もうひとつの代表曲「悲しき願い」を鮮やかに蘇らせてみせたのが他ならぬエリック本人であることを思えばそう想像してみたくなるのが人情というものだ。聴いてみろよ固ヤキソバみたいにぱりぱりしたこのギターのカッティングを。このドラムスを。浴びてみろよ火口からほとばしる俺の魂のこの叫びを。この唸りを。…ほらほらきっと得意気に彼はそう言うのだ。この曲はアルバムで聴くことだ。どっぷり浸れる8分30秒の快感が待っている。セルフ・カバー10傑に入るのは間違いない。それじゃ残りの9傑は、とは聞かないこと。

 出た出たエルトンの十八番。オリジナル・アルバムに収録されていないシングル。一体これでいくつめなんだ。70s前半こんな芸当をあらよっとやってたメンツを挙げよと問われて出てくるのはポール・マッカートニーにマーク・ボラン(T.レックス)に、えーと…。後が続かない。誰にでも吹くほど都合のいいものではないのだね追い風とはそもそも。この「フィラデルフィア・フリーダム」はまさにその風を受けて海を帆走するかのような勢いと明るさがある。ミディアム・テンポながらもぽんぽん弾んでいる。さあエルトンと一緒に進もう未来へつながるこの海を。めざそうこの海の向こうにある楽園を。追い風は、しかし船長エルトンをそろそろ見放すことをひそかに決めていた。船長は、そしてそれを知っていた。風向きはまもなく変わる。

 バッド・カンパニーに「Shooting Star」という曲がある。ロック・スターを夢見る少年が残してゆく母親への思いを断ち切り家を出る。やがて成功し夢を叶えた少年を最後に待っていたのはベッドの上で二度と動くことのない冷たくなった自分だった。そんな内容の歌だ。これをポール・ロジャーズは情に流さず枯れた声で淡々と綴る。そんな味わいがむふふなのだ。彼らバッド・カンパニーはこの曲や今回登場の「グッド・ラヴィング」を納めた2nd『Straight Shooter』までだったんだ結局。3rd『Run With The Pack』は懐かしい光景を呼び覚ますという私個人の理由で手放せないにすぎない。なんてどこかで書いたな。潔さ、深み、豊潤さにおいて前2作にやっぱり遠く及ばない。もうかなり前にこのバンドを離れたポール本人もここ10年以上だらだらと"ルーツ確認"ごときの作品をリリースするばかりで面白味に欠ける。どうしたというのだ。君に敵う「ロック」ボーカリストが何人もいたか。

 「そよ風の誘惑」。このあたりから彼女オリビア・ニュートン・ジョンの人気に火がついた。んで「ジョリーン」だの「フィジカル」だの次々と。洋楽にさして興味を持たない人にも認知されていったのだ。「フィジカル」といえば当時まだ珍しかったエアロビクスなる運動とそのカタカナ表記が広まっていくのとダブる。なんだ突然運動始めてオリビア。なんだ突然その格好。それまでのカントリーというかメロウというか路線から大きく外れちまって。っても私はそのいずれもお好みではない。
 私に届く彼女の曲はただ1曲しかない。「I Still Call Australia Home」だ。オリビアが生まれたのはイギリスらしいが、幼い頃から青春時代を過ごしたオーストラリアこそ彼女にとって母なる国といっていい。彼女が20年前とあるTV特番で歌ったこの「~ Call Australia Home」には第2の国歌と呼ばれる「Waltzing Matilda」が織り込まれてもいた。他の海外在住オーストラリア人と同様オリビアにも特別な「~マチルダ」の旋律を間奏に挿みながら"祖国"への思いの丈を「…call Australia hooooooome」と高らかに歌い上げる彼女の声。それはガイジンであるはずの私の胸を焦がした。届いてきた。


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