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マイ・オムニバス VOL.20 前

【PRINCESS BORN TO SING】 75年 3/10

01 ママのファンキー・ロックンロール / スージー・クァトロ
02 恋の診断書 / キャロル・ダグラス
03 永遠の女神 / ウィッシュボーン・アッシュ
04 スヌーカルー / リンゴ・スター
05 悪い貴方 / リンダ・ロンシュタット
06 踊れドラゴン / カール・ダグラス
07 ハウ・ロング / エース
08 哀しみのマンディ / バリー・マニロウ
09 ハイウェイをぶっ飛ばせ / バックマン-ターナー・オーバードライブ

 なんだこの弾むベースは。なんだこのスリリングさは。そしてこの美しさ。気品。バランスの良さ。ちっ、こんなことならあのとき見つけたあの1stを逃すんじゃなかった。4thはどこで売ってたんだっけ。ライブ盤も。くそぉ。…というあーだこーだは昨年のことである。アルバム『百眼の巨人アーガス』1枚だけでウィッシュボーン・アッシュのことを「分かった」つもりでいつづけた私の甘さを暴露してしまったのはこいつだ。『巡礼の旅』という名の2ndだ。その後1stも4thもなんとか捕獲でき、あとは『Live Dates』が見つかるのを気長に待っている近頃である。お茶でも一服。
 しかし全然コメントになってないな「永遠の女神」というシングルの。いつものことってか。ふはは。って「~女神」はお好みではないのだよ。収録アルバム名の通りなのね『永遠の不安』という。

 「ハウ・ロング」か。エースの登場だ。ってもこれ1曲だけで私は彼らを忘れてしまう。いわゆる"一発屋"という引出しにしまわれたままこれからも長い年月を彼らは過ごすことになっていたはず。が、その引出しから出てくる日ははからずもやってきた。
 ある日ある中古CD屋店内を占拠する無数のアルファベット羅列群から決して目立つはずのない"ACE"という3文字が私の目にとまってしまった。これを偶然と呼ばずなんと呼ぶ。唖然?呆然?愕然? 違うぞ全然。頭の中で鳴り出す旋律「ハウ・ロング」。これは突然。気がつけば小さな表記文字を引き抜いた私はそれをレジに持っていく。このとき呆然。大したものでもないだろう、な私の思い込みはそして覆されることになる。これには愕然。
 嬉しい収穫だったのだこのベスト盤は。オリジナル1st~3rdアルバムから選曲されたそれはときに「ハウ・ロング」がかすむくらいの粒選りである。美味しい曲々が丼にテンコ盛り。長い道のりだったな彼らの深みに気づくまで。「How long」たぁシャレにならない。それは引出しから出されてホコリをはたかれた彼らが私に放ったセリフそのものだったんだね。

 私の背中にそっと身を預けながら耳元で「Ooh Baby Baby」と息を吹きかけるリンダ。だ、だめだよリンダ。彼女の両腕を取り正面を向かせた私の理性はかろうじてこう言う。リンダ、覚えているかい。きみが上目遣いでぼくを見ながら「悪いあ、な、た」とつぶやいたことを。そうなんだ。きみの口から出てきた最初のことばがまだ忘れられないんだ。彼女の腕から手を離して私は目を閉じる。ほら、きみも瞼を閉じてごらんよ。今でも目に浮かぶだろう。二人が出会った日のことを。ああそうだとも。きみが言った通りだ。きみをぼくのとりこにさせちまったぼくは確かに悪いヤツだともリン…リンダ、ど、どこに行ッタンダ。リンダ~。ぼくのリンダぁ~。
 彼女リンダ・ロンシュタットはじっとしていなかった。あるときはイーグルスにまとわりついてアメリカの大地に吹く乾いた風となり、あるときはネルソン・リドル率いるオーケストラに導かれ数々のスタンダードをしっとりと歌い上げる歌姫になり、またあるときはきっと笑みを浮かべながらメキシコに飛んでいってエスパニョールしてしまうのであった。一ヵ所にとどまるということをこのシンガーは知らない。歌う場を求めてあちこち飛びまわる。ジャンルという垣根など彼女にはハナから毛頭ない。器用というのとは違う。非常に貪欲なのだ。リンダは根っからの歌うたいなのだと納得するしかない。シンガーとしてのこの貪欲さはどこからくるのだ。リンダぁ~。

Ronstadt_wheel


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