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マイ・オムニバス VOL.16 前

【時代とドライブ】 74年 5/11

01 ショー・マスト・ゴー・オン / スリー・ドッグ・ナイト
02 ベニーとジェッツ / エルトン・ジョン
03 ウガ・チャカ / ブルー・スウェード
04 ソウル・トレインのテーマ / MFSB featuring スリー・ディグリーズ
05 愛は夢の中に / カーペンターズ
06 遥かなる愛の夜明け / シカゴ
07 悪魔とドライブ / スージー・クァトロ
08 ダウン・バイ・ザ・リバー / アルバート・ハモンド
09 オー・マイ・マイ / リンゴ・スター

 ふーむ、いつぞやと同じだ。今回の9曲に思い入れのある作品は少ないぞ。さて、それじゃ行こうか後ろ向きな4つのコメントに。たはは。

 臆面もなく「ショー・マスト・ゴー・オン」と白状してみせ、これを収録したアルバムに『Hard Labor』というタイトルをストレートにつけてしまった当時のスリー・ドッグ・ナイトは果たして本当に疲労困憊だったのだろうか。この曲やアルバムを聴く限り、彼らがこしらえたエンターテインメントの一つの完成形がここには見て取れるぞ。そりゃトップスピードで泳ぎつづけるのは難儀には違いないだろうよショウビズという名の海を。でも彼らはそれを笑い飛ばすだけの作品を間違いなくこのときも作り上げたんだと思う。ちょっと待て小僧。ジョン・レノンが「ヘルプ!」で吐露したのと同じものをワシらの中に嗅ぎ取れなかったのかよ当時。そんなふうに今になってこぼされないことを祈る。

 一度耳にしたが最後、気に入ろうが入るまいが100%逃れられない無敵のリフというものがある。とっさに思い出すのがクイーンの「We Will Rock You」やホット・バターの「ポップコーン」だ。がしかし、今回登場する「ウガ・チャカ」の強烈さに敵うものはなかろう。なんたってリフはアカペラそれもコーラスときた。しかもその繰り返されるフレーズがまんまイントロだ。それも大声で。なにより小さな子供が真っ先に口真似したくなっちまうに違いないほどユーモラスでひょうきんだこのフレーズは。うがちゃかうがうがうがちゃかうがうが。でもこの曲の魅力はそこだけだ…で〆るつもりだったのだが、この無敵のリフにはどこかしら懐かしさのようなものも潜んでいるんじゃないかい。なんて突飛なことが頭をよぎったりする。日本の例えば民謡に見るリズミカルで勇ましい掛け合いに通じないか、なんてね。ど、どうしたんだ急に。

 なんでこんなんがヒットするんだろう、受けるんだろうアメリカでは。「グッドバイ・イエロー・ブリック・ロード」につづくアルバムからのシングルがこの「ベニーとジェッツ」だったことに戸惑い、それがアメリカのチャートを駆け登る様を見せられてさらに戸惑う。そういう点で妙な刻まれ方が記憶に残る。「Grey Seal」とか「Jamaica Jerk Off」あるいは「Your Sister Can't Twist」あたりに期待してたんだけどな少年は。この曲に漂うゆるい感覚、あるいはいわゆる"レイドバック"な味わいが時代の空気に共鳴したのかな。今もって謎だ。その歌詞についぞ一度もあたることなくここまで来てしまったせいもあるかも。

 もう戻らない。戻れない。時代がそれを許さない。ポップス界に身を置く決意表明のようなものだったんだと今思う。5枚目のアルバムをリリースし「サタデイ・イン・ザ・パーク」をそこからシングルとして送り出した頃からいわゆるメッセージ性を薄めていった彼らシカゴは、7枚目のアルバムからついに「遥かなる愛の夜明け」をシングルカットし、後戻りしないことを高らかに宣言したのだ。時代のバトンはロバート・ラムからピーター・セテラへと手渡されていったのだ。高音域を得意とするピートのボーカルがあまりにも象徴的である。以後例えば「拝啓トルーマン大統領」のようないかにもな曲をときおり披露したようだが、そこにはかつての力強さも輝きもなかった。いわんや怒りをや。デヴィッド・フォスターやビル・チャンプリンらが絡み始める80年代に入ると彼らは完全に時代に飲み込まれてゆくことになる。というより迎合した。AORということばの独り歩きに付き合ってしまった。もはやロック・グループではなかったのだ。売れたけどね。


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