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マイ・オムニバス VOL.15 後

【ピーターのロコモーション】 74年 4/11

11 太陽の扉 / ジリオラ・チンクエッティ
12 ロックンロール・フーチー・クー / リック・デリンジャー
13 愛のモッキンバード / カーリー・サイモン
14 紫の炎 / ディープ・パープル
15 ハートブレイカー / ローリング・ストーンズ
16 太陽を背に受けて / ジョン・デンバー
17 炎のロックンロール / クイーン
18 ロコモーション / GFR
19 ハピネス / ギルバート・オサリヴァン
20 愛のためいき / ロバータ・フラック
21 タイガー・フィート / マッド

 きゅるきゅるきゅる。どこからともなく切り込んでくるブライアンのギター。私のクイーンはこの渦巻きギターで突如幕を開けたのだった。全く芸のない「炎のロックンロール」という邦題を与えられたこの曲は、しかし、後半13段の音階を駆け登るギターやら旋律を響かせるかのように跳ね飛ぶドラムスによって確実に私を捕らえて離すことはなかった。が、私のクイーンは後に訪れる「キラー・クイーン」とか「ボヘミアン・ラプソディ」路線が色濃くなってきた季節、幕を閉じるのであった。「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラブ・ユー」?だれの曲だそれ。

 「紫の炎」は、パープルとはつまるところリッチー・ブラックモアではなくジョン・ロードそのものである、ということを私に知らしめた曲である。暴れまくるオルガンに間奏終盤の大乱舞を見せられ挙句の果てに大噴水を浴びせかけられた私は顔を滴る水を拭おうともせず、それを悟ったのだった。ついでながらボーカルならイアン・ギランではなくデヴィッド・カヴァーデイルの野太い泥臭さを刷り込んでいる。ただ、デヴィッドが光っているのはこの収録アルバムで、だけだな。『嵐の使者』以降の作品も、Whitesnake名義も苦手だ。ジミー・ペイジとのコラボを除けば。
 ジョン・ロードに『Before I Forget』というアルバムがある。ジャケ一杯に描かれた象の正面図はタイトルを思えば意味深である。この作品はいつしか大切な一枚になってしまった。

 ぎんぎらぎんにさりげなくぅ…ぜ、全然さりげなくないじゃないか。これでもかと目一杯ぎんぎらぎんに輝いているじゃないか。手袋まで銀色にするか普通。だいいち手袋で弾けるものなのかギターは。…などという茶々なぞ吹き飛ばさんばかりのエネジーに溢れかえっているのだその1stアルバムのジャケでリック・デリンジャーは。格好いいのだ。憧れちゃったのだ実のところ。もちろん中味も格好いいっ。1発目の弾「ロックンロール・フーチー・クー」に始まる充填された12発の弾のどれもこれもがきらめいていて、今聴いてもバキューン、バキューン。気持ちよく撃たれるのである。ところでこのアルバムに参加しているメンツが興味を引く。Edgar Winterはさておき、Joe WalshやDavid Brombergのクレジットににやにや。「It's Raining」に切ない色を添えているハーモニカがToots Thielemansだったというのは驚きだ。ちょっと解せないのがほぼ全曲でタイコを叩くBobby Caldwellという名。まさかまさか。

                   ****

 エアチェックしまくったカセットテープは今ではそのほとんどが捨てられている。残った中にTDKのSDという水色の初期タイプがなぜか1本あるのだ。もう10年くらいケースから取り出されることすらなかったかもしれない。それがあったことさえ普段は忘れられている古いテープ。この中に「ロコモーション」という名の曲が納められていることは、しかし、聴かなくてもわかる。どういう歌声だったか、聴かなくてもすぐに思い出せる。もちろん誰が歌ってるかということもね。

 歌い手の名はPeter Smith。彼は12才のときこの曲を歌った。当時私は彼より少し上。今彼はどこにいて何をしてるのだろう。私の中のピーターはいつまでたっても12才の少年のまま。イタズラの好きな愛くるしい目に栗色の髪。声変わり一歩手前の喉でそれは歌われた。今彼はおそらく私の身長を越えて立つ凛々しい青年、いやもう立派なオヤジにちがいない。どこの町を歩いてるのだろう。今もこの歌を歌うことがあるのだろうか。

 彼の来日を夢に描くことがある。彼は妻や子供をきっとつれているのだ。あるいは父や母、それに二人の兄がにこにこしながら一緒なのだきっと。いいのか描く夢のままで。

 本当に久しぶりに彼の「ロコモーション」を今聴いた。途中で歌詞を忘れ吹き出す彼の笑顔がそこにある。茶々を入れながら歌う日本から来た少年もそこにいる。

 ごめんねピーター。そしてスミス・ファミリー。私の大切なアメリカの家族。74年の夏はあなたたちによって彩られている。ウィスコンシンはウェスト・ベンドという小さな町の小さな湖そばのコテージとともに。何もかもが永遠に色あせていない。きっとあなたたちを探し出して、そして、いつか必ず日本に招待する。その夢が叶ったらまた歌うんだピーターと。「ロコモーション」。


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