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マイ・オムニバス VOL.14 後

【ナイロン弦の不幸】 74年 2/11

11 ユー・アンド・ミー / ムーディ・ブルース
12 愛の悲しみ / デヴィッド・ボウイ
13 僕はロックンローラー / ミシェル・ポルナレフ
14 いちご畑のサリーちゃん / ドーン
15 ロックンロールで大騒ぎ / エルトン・ジョン
16 君に首ったけ / ラズベリーズ
17 デイトナ・デモン / スージー・クァトロ
18 ひとりぼっちのメリー / アート・ガーファンクル
19 玉突きリチャード / フェイセズ
20 燃えよドラゴンのテーマ / ラロ・シフリン
21 ユア・シックスティーン / リンゴ・スター

 「いちご畑のサリーちゃん」? なんだこのタイトル。く、口にするのが恥ずかしいじゃないか。メロディだって一体何匹目のドジョウを狙うつもりだ、な二番、三番煎じでしかないじゃないか。ドーンなら「ノックは3回」、「幸せの黄色いリボン」、「嘆きのジプシー・ローズ」。この3つでもう十分じゃないか。…なんてずっと思ってた愚かさをここで白状せねばならない。そうなのだ。捨てたもんじゃない、どころかベリー・グッドなのだこの「いちご畑~」は今聴くと。当時の時代の気分を映したような邦題こそ今でも腰は引ける。が、作品そのものは極めて良質のエンターテインメントである。まじめに作ってあるのだ。楽しいのだよ特に後半の展開が。こうしてみると「~黄色いリボン」の涙腺刺激なお約束定番ストーリー性や「~ジプシー・ローズ」の計算された構成の見事さが少々うざったく思えてもくる。恥ずかしいのはおまえの方じゃないかいつかけん。

 当時大して気にも留めてなかった「愛の悲しみ」だってそれはそれは。職人が手がけた丁寧な仕上がりだったんだねまるでこうして改めて聴くと。シングル的かどうかはさておき、他人のカバーとはいえボウイの優れた解釈には違いない。「~悲しみ」を含むそのカバー集『Pin Ups』ももはや無視できなくなってきたのだ。ごめんよボウイこのアルバム今まで放ったらかしたままで。

 「ユー・アンド・ミー」だってそうだ。その疾走感こそシングルにふさわしいと思わせる「ロックンロール・シンガー」だけで満足してた少年時代が悔やまれる出来映えである。柔らかい帯が幾重にも絡まってできた重厚な大帯が波のようにうねり、しなる。その快感を何に例えたらいいのだろう。こんなサウンドは彼らムーディ・ブルース以外に誰が作れただろう。

 リリースする時期を逸した「Step Into Christmas(ロックンロールで大騒ぎ)」はどのオリジナル・アルバムにも収録されていなかった。なにかのオムニバスやボーナス・トラックや後に出る『Rare Masters』でしか聴くことはできなかったのだCDでは。…などというあーだこーだは後年の話。この曲に繰り返されるあのひらひら舞う尾ひれとでもいうか、きらきら落ちてくる金属の葉っぱとでもいうか、にうっとりしていたのだ少年は当時。企画におんぶするだけで終わらないしたたかさをこの作品は持っていたということだ。

 中学校に入学して間もない頃、音楽教師があるとき突然「次の授業からギターをやる。兄ちゃん姉ちゃんなんかのお古があるヤツはそれを持ってこい。なければ学校で売るから買え。1台8000円だ」と言い放った。こうして親に工面してもらった金と引き換えにクラシック・ギターを手に入れた坊主頭は、しかし、授業で習う「荒城の月」やら「夏の思い出」なぞすぐに飽きた。黒いビニールケースに包んで持ち帰る坊主頭が自宅でトライするのはもちろん「長い夜」とか「ハイウェイ・スター」だったのだ。そんな激しい曲々を、しかも手製のピックでがんがんやればたちまち切れるに決まっているのだナイロン弦は。が、しかしそんなことでこの坊主はメゲるはずもない。かかかか。という訳で、私のロックはポリバケツ・スピーカーから流され、ネックの太いクラシック・ギターで弾かれることになる。幸福な時代だった。
 ようやくハード・ロックにとって代わったのがポール・サイモンやらアート・ガーファンクルの楽曲である。クラシック・ギターの不幸はこうして終わりを告げたのだった。「ひとりぼっちのメリー」。この曲を含め彼(ら)の作品は聴くためというより弾くために存在したといっていい。

 ところでそのギターはついぞ捨てられることはなかった。ネックは曲がりフレットはえぐれ弦は錆びつきチューニングすらできない。しかし間違いなく今も手の届くところに置かれている。静かに眠っている。今回写真撮られるために起こされたけど(笑)。

Oldguitar


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