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白石一文の見えないドア

◆近頃読んだ
 白石一文  『見えないドアと鶴の空』
 村上春樹  『海辺のカフカ』上・下

◆近頃積んである
 小杉健治  『絆』
 船戸与一  『砂のクロニクル』上・下

◆近頃投げ出した
 帚木蓬生  『閉鎖病棟』
 真保裕一  『ボーダーライン』

◆今読んでいる
 飯嶋和一  『黄金旅風』

 偶然なんだろうか。偶然なんだろうな。『見えないドアと鶴の空』も『海辺のカフカ』も超常現象を織り込ませている。

 村上春樹はまだ分かる。なんたって、それはもう村上春樹だからである。独特の浮遊というか、閉鎖というか、あいまいさ between 日常&非日常というか。あるいは隠喩なら一通り揃っているコンビニというか百貨店というか。村上春樹とはそういうもんだ私にとって。文字一つ一つに「」を打つなよキーとなるフレーズの。筆者が読み手にここだよと教えちゃダメだい。気分悪い。もう読まない。読むまい。読んであげない。ファンタジーもどきのつづきがどんなに知りたかろうと。削ぎに削ぎ落とされたことばがどんなに美しかろうと。

 しかしなぁ。白石一文が使うとは思わなかったなそのチョージョー現象を。前作短編集『草にすわる』にも溢れていた「何のために生まれ、生きる」のか、なんてテーマから逃げず、臆面もなく真っ直ぐ追求しようと試みる筆者の思いは、その臆面のなさゆえに伝わってはくる。痛いくらいにね。がしかしだ、くだんの手法を今回使わずにはいられなかった理由が私にはよく分からない。たびたび帰着する坊主の説教あたりまでならぎりぎりセーフなんだけどな。

 白石の処女作『一瞬の光』。が持っていた、エリートから堕ちてゆくことによる素の自分との向き合い。終幕に突如突き上げ胸えぐらせた稀有の切なさ。そしてある種のエンターテインメント。そういうものを手に入れることはもう叶わないのだろうか。

 なんだかもやもやしちまったので、白石一文のここまでの作品を採点して〆る。 <5点満点>

 『一瞬の光』 5
 『すぐそばの彼方』 4
 『不自由な心』 3
 『僕のなかの壊れていない部分』 3
 『草にすわる』 4
 『見えないドアと鶴の空』 3

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