« マイ・オムニバス VOL.10 前 | Main | マイ・オムニバス VOL.10 後 »

横浜深夜3:00AM

 氷川丸は濡れていたのだよ冷たい雨に。皆で揃って傘買いにコンビニに駆け込んだよなホテルの傘借りてさ。買うのは4個か5個かで迷ったんだ1個500円の月餅を。行きたくなかったみなとみらいにも結局足を伸ばしたんじゃなかったか大リーグショップ目当てのつれあいに付き合いクイーンズスクエアの。滅茶苦茶濃かったぞ待ち時間短かっただけで選んだ魁龍のトンコツラーメンは。

 それにしてもこの10日余りのめまぐるしさったらない。って、いつものことなのだけど。本当に行ったのかヨコハマに。あれは夢だったのか。いや、夢なんかじゃない。あれは大切なセレモニーだったのさ終わるための。

 3月下旬。横浜はとにかく寒かった。前の夜コンビニで買った傘を差して歩く中華街の朝は足元から冷たい。天仁茗茶で茶葉を、永楽製麺所で麺とスープを、華陽園で月餅を求めた足は老いたホテルのロビーに落ち着く。外の寒さだけでなく、時間からも永遠に隔絶されたそこは独特の暖かさ、穏やかさに満ちている。絨毯の鈍い赤。天井の白。ホールを支え続ける太円柱のこげ茶。ソファに腰を深く下ろすと、窓に切り取られた山下公園とその向こうに煙る氷川丸が見えた。ここは別世界だ。

 しばしくつろぎホテルを出た足は止まない雨にたじろぎ、たちまち地下道に飛び込んだ。てくてく。長いトンネルだなこの地下道。てくてく。ようやく中華街駅構内にたどり着き、エスカレーターに乗る。ホームへとゆっくり降りてゆく目の前に開けるこの大空間はなんなんだ。あの天井の曲面からの距離はどれくらいあるんだ。ハリウッド撮影所のセット並みだ。未来都市のまるで。うーむ。どうにもすごいことになっていたのだ横浜は。

 いつもの横浜。古い横浜。新しい横浜。どれもこれもが堪能させてくれた。今回の横浜は、しかし、寝ないで喋り倒したホテルの深夜。これに尽きる。つれあいの一人は旅行直前に痛めた背中をぴんと伸ばしたまま。一人は1年に1回だとうそぶく葉巻でさんざ部屋を煙に巻きながら。そんな二人に長い間おつかれさまでしたと私はつぶやきながら。そうなんだ。今回の横浜は大切なセレモニーだったんだ終わるための。そして始まるための。

|

« マイ・オムニバス VOL.10 前 | Main | マイ・オムニバス VOL.10 後 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11727/392231

Listed below are links to weblogs that reference 横浜深夜3:00AM:

« マイ・オムニバス VOL.10 前 | Main | マイ・オムニバス VOL.10 後 »