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マイ・オムニバス VOL.9 後

【チャートバスター】 73年 3/11

11 ダニエル / エルトン・ジョン
12 マイ・クルー / リタ・クーリッジ
13 スーパーフライ / カーティス・メイフィールド
14 シング / カーペンターズ
15 ブロックバスター / スウィート
16 ロックンロール・シンガー / ムーディ・ブルース
17 やさしく歌って / ロバータ・フラック
18 20センチュリー・ボーイ / T・レックス
19 パート・オブ・ザ・ユニオン / ストローブス

 ロバータといえばこの曲だろう。ネスカフェといえばこの曲だろう。子供でもメロを口ずさめるこの曲だろう。しかし、私の好きなロバータはこの「やさしく歌って」ではない。残念ながら「ジェシー」でもない。官能をくすぐるジャケに包まれた次作『Feel Like Makin' Love(愛のためいき)』収録の「いつか見た冬の陽」なのである。アルバムタイトルから浮いたような、そのひんやりした風情がいい。13分近い長さの後ろ半分がいわゆるクロスオーバーな展開にもかかわらず。もちろん「愛のためいき」のえっちな世界もそれはそれはお代官様。

 なんなんだ。ギター・リフがそっくりそのまんまじゃないかい、チャートの玉座を明け渡したDavid Bowie「The Jean Genie」のそれと。てのが「ブロックバスター」を聴いたときの第一印象である。じっくり聴き返していたなら、例えばデビュー時のSuzi Quatroを取り巻く音の肌触りと同じであることに気づいたはずだ。チープな例えばジャンク・フードの、今頃気づいてどうする、な肌触り。これはクセモノである。演奏はただウマければいいってもんじゃないのだ。どこか引っ掛かるヤらしくて怪しくて切なくて物騒でカッコよくてスリル満点で…なナニモノカがあれば飛びついてしまう。そのナニモノカを当時の英国少年少女は即座に嗅ぎ取ったはず。そうじゃなかったら「ジーン・ジニー」を蹴落とし英国チャートのNo.1に居座るものか。

 いいなぁ。ムーディ・ブルースの『Days Of Future Passed』は。この1stアルバムに満ちる天上にきらめんばかりの美しさの前では、『夢幻』や『童夢』、はたまた『子どもたちの子どもたちの子どもたちへ』でさえも、あるいはこの「ロックンロール・シンガー」を収録した『Seventh Sojourn』ですら、私の中では色褪せて見える。と書きながら2nd『失われたコードを求めて』も買ってあったことを思い出し、さっきからがさがさ探してたりするのだがまだ見つからないのだ。くそっ。どこに行ったんだ。これがホントの「失われたCDを求めて」かいな。だはは。などと冗談言ってる場合じゃないのだ。なんとかならんのかこのCD収納棚とかケースとか。もう滅茶苦茶。それにしても、これのどこが「ロックンロール・~」のコメントなんだ。

 オールナイト・ニッポンのディスク・ジョッキーが放った「どこよりも先に紹介しますよー」ちゅうセリフに色めきたち、真っ暗な部屋で初めて耳にした「20センチュリー・ボーイ」。どこを切ってもごちゃごちゃで、クールで、ヤらしさ満載のこの曲が「ほれほれ小僧、EじゃろEじゃろ?」。「うん。と、とってもE」。くるまった布団の中で少年はぶつぶつ。プロデューサーTony Viscontiは弦楽器だけでなく、管楽器でもこいつらをすさまじく魅力的にした。ストーンズの「ブラウン・シュガー」ともども、【ロックンロール×サックス=少年つかけんヤラれる】という公式はここに成立したのである。 
 T.レックス怒涛の行進速度は、しかし、この曲をリリースした頃からゆっくり、そして急激に落ちてゆくのだが。「ぼくは30まで生きられない」。この予言が現実のことになるとは誰一人夢にも思うはずもないこの年、マーク・ボランは26才を迎えるのだった。彼の晩年がスタートしていた。

 "ALL JAPAN POPS 20"の20位以内にランキングされそうでされない、21-25位あたりをしばらくうろついているという図はなかなか困ったものである。なにしろ21位以下はすべてレポート用紙の裏側に記されるのだ。それも殴り書きで。ミュージシャン名すら省略されたこともある。表舞台とは扱いが違うのだ。こんな「圏外」を眺めるために、いちいち紙をめくるほど少年は我慢強くできていなかったのだ。イヤなら早く出て来いよステージに。が、うろうろしながら"デビュー"することなく、力尽き消えていった曲々は実は少なくない。「マイ・クルー」もその一つだった。当時の少年はためらうことなくこの曲に「圏外」の烙印を押し、そのまま忘れていた。
 私がリタの世界に引き込まれたのは、後に大きくブレイクする彼女ではなく、結局この曲を納めた『The Lady's Not For Sale』によって、というのはほんの数年前のことなのだけど、である。皮肉なものだ。20年以上の空白を経てようやく"ランクイン"させる薄情者に、しかし、リタは微笑んでくれた。もしかすると少年が烙印を押したとき、彼女は同じ笑顔を見せていたのかもしれない。


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