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マイ・オムニバス VOL.9 前

【コーヒーに映る雲】 73年 2/11

01 うつろな愛 / カーリー・サイモン
02 冬の散歩道 / サイモン&ガーファンクル
03 ママはダンスを踊らない / ロギンス&メッシーナ
04 ジーン・ジニー / デヴィッド・ボウイ
05 ロックス・オフ / ザ・ローリング・ストーンズ
06 青空の使者 / CCR
07 ア・ソング・フォー・ユー / リオン・ラッセル
08 魔法使い / ユーライア・ヒープ
09 グッドバイ・ジェーン / スレイド
10 忘れじのグローリア / ミシェル・ポルナレフ

 「ロックス・オフ」は、脇役なはずのブラス・セクションが終盤爆発し主役に踊り出る様が。「青空の使者」なら、ギターが間奏のたびぷかぷか宙に浮く様が。それぞれ鍵を握っているのが今聴くとよく分かる。正しいシングルには正しいリフやフレーズが必ずあるものなのだ。残りはメロディを含めオマケですらあってよいのだ。正しいシングルとはそういうものなのだ。

 しわがれ、枯れた喉や投げやりな節回しで音符の森を潰そうが、なぎ倒そうが、優れた楽曲という山はそれすら飲み込んでしまう。やがて歌い手は服従し、次に尊敬し、最後に愛を注ぐことに夢中になる。いやしくもシンガーと呼ばれる登山家達の前にそびえ立つ「ア・ソング・フォー・ユー」とはそういう山の一つだ。イントロに零れ落ちてくるピアノの前でリオン・ラッセルは彼の持つ最大限の愛情を注ぎこんだのだ。

 「対自核」の凄さがその終盤にあることを知らなかった少年は、「魔法使い」の方を刷り込んでしまう。なんていったらいいんだろ。バランスがとれてるんだよなぁ。適度にドラマチック。適度にロマンチック。適度にソフトでアコースティック。適度にハードでエレクトリック。それらが中途半端にならず、納まってほしいところにすべて納まっている。ある意味、型破りとは対極にあって、おもしろみに欠けるのだけど、こくのある味わいと気品さがそれを救っている。

 以前ここで紹介した悪友S。私がT. Rexにハマり出した頃、彼のお気に入りはスレイドだった。「グッドバイ・ジェーン」はもちろん、「カモン」やら「スクィーズ・ミー、プリーズ・ミー」などを私に聴かせては喜々としていたのは彼だ。その頃すでに洋楽の海を泳ぎ始めていた私は、しかし、もうたじろぐことはなかった。負けていなかった。T・レックスを低劣屑と投げ捨てる彼。Sladeを素隷奴と嘲る私。Sと私の戦いはようやくここに火蓋を切ったのだった。嬉しかった。彼のことはまたいつか稿を改め書いてみたい。

 やっぱり私はこの時期のDavid Bowieが一番好きだ。アコギの刻みと彼に寄りそいつつ天高く舞いあがるオーケストレーション「Starman」に胸焦がされる余韻に浸っている私のそばを、一人のレディが歩いてくる。ボウイとタメを張るMick RonsonはじめThe Spiders~の面々が大爆発している中を一歩一歩進んでくる。不明瞭なメロで。彼女の名は"Jean嬢"。「ジーン・ジニー」だ。彼女の歩きにシンクロした私の腰は規則正しく揺さぶられるのであった。
 こうしてボウイは私を次々に翻弄してゆくことになる。振ってた腰の快感にすっかり酔いしれた私に構うこともなく、彼は次なる手「Let's Spend The Night Together」というロケット弾発射のカウントダウンを始めていたのである。ストーンズのオリジナル云々など何の意味も私に持たせず。

 Carly Simonに『Clouds In My Coffee』という名のCD3枚組ベスト盤がある。自身の選曲で、各種サントラに使われた数曲を含むそれは予想以上にレーベルを超える膨大なもの。とは彼女の弁だ。それでも、泣く泣く外したブツはあるそうで。んでも「Hello Big Man」を外したのはなぜなんだカーリー。両親への君のありったけの思い、憧憬を込めたはずのあの曲をなぜ。なぜっ。
 この"コーヒーに映る雲"というフレーズはもちろん「You're So Vain(うつろな愛)」の中に今でも朽ちずにある。この曲のどこに私は惹かれたんだろう。イントロに転がされる重たいナニモノカの間をぬって一瞬発せられるカーリーの囁きだったのか。酒に酔ってるかのようなボーカルが隣のミック・ジャガーによろめく瞬間だったのか。どこにでも転がっていそうに見えて、ちょっと他に似たタイプが見当たらない不思議な旋律だったのか。…いいかげんにせぇよつかけん。ノーブラのカーリーを写したジャケだったのだ。と正直に言えよ。

Carly_secrets


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