« 白石一文 『草にすわる』 | Main | 佐々木譲 『ストックホルムの密使』 »

真保裕一 『ホワイトアウト』

 日本最大の貯水量を誇る奥遠和ダムに勤める富樫輝男は吉岡和志とともにダム近くに認めた冬山の遭難者二人を助けに向かう。結局吉岡自身が遭難してしまうことになるその罪の意識を抱えた主人公富樫が、過激派組織に乗っ取られたこのダムと吉岡の婚約者だった平川千晶を救おうと奮闘するストーリー。厳寒期の雪山に展開するハードアクション。何度ここで諦めてしまおうかと思う場面で富樫も千晶も、亡き吉岡に「励ま」され歯を食いしばる。立ち上がる。前進する。

 ところで、富樫はダム発電所の運転員。千晶はOL。ごく「普通」の人であろうはずだが、どう見ても二人は超人的である。ウルトラマンである。キューティハニーである。そのリアリティの希薄さが唯一の不満ではあるが、はらはら緊張させたまま引っ張っていく展開に片時も私の目は離れるわけにはいかないのだ。映画化されたのももっともだ、ちゅうのはまぁどうでもいいことか。

 で、この二人は最後の最後まで会話を交わすことがない。「済まなかった」。そう伝えたかったはずの富樫は…。凍傷で両足の先端と右手の指3本を失った富樫に救助され病院のベッドで目覚める千晶は、別室で昏々と眠り続ける富樫とついに対面する。千晶に手を握り締められた富樫は…。にしても、小憎らしい描写やね。良質かつ優れたエンターテイメントだ。

 雪山を襲う白い悪魔「ホワイトアウト」は視界を限りなくゼロにし、生きようともがく人間の意思を萎えさせてしまう自然現象のこと。本当の敵はテロリストではなく自分自身の中の弱い部分なのだと富樫が気づくシーンがこの作品の肝なのかも。

|

« 白石一文 『草にすわる』 | Main | 佐々木譲 『ストックホルムの密使』 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11727/70855

Listed below are links to weblogs that reference 真保裕一 『ホワイトアウト』:

« 白石一文 『草にすわる』 | Main | 佐々木譲 『ストックホルムの密使』 »