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ジョージ・ハリスンに思う

Harrison_allthings
 ジョージ、きみのいくつかのアルバムがリマスターされ、矢継ぎ早に再発されているのを知ってるかい。『33 & 1/3』、『慈愛の輝き』、『想いは果てなく~母なるイングランド』、『ゴーン・トロッポ』、そして『クラウド・ナイン』までも。
だがしかしそれがなんだというのだ。きみへの想いもリマスターしろとでもいうのか。

…というイントロとはまるで関係なく、「色即是空」なら一発変換できるのに「空即是色」の方はぼくのIMEではできない。試しに「くうそくぜしき」とやったら「空疎久世子規」と出た。こんな俳人どこかにいたか。

 いつだったか、よせばいいのにNHKスペシャルでシリーズ『ブッダ』を見たんだ。ハナから興味持たずに眺めてるつもりがそうじゃなくなる。いつのまにか画面に入り込んでしまう。これだから金のあるNHKは困るのだ。BBCも同じかい。

 その回では、普通なら越えてくることができない、一番低い地点でも標高4千メートルだという山々を越えて、ガンダーラの地に北側から侵入、殺戮、制圧を完了するクシャーンなる騎馬民族の一大軍勢が登場してくるんだ。当時ブッダの教えの一つは「非暴力」。実際にはいくつかの抵抗があったのは当然としても、あっという間にインドはその広大な西半分を失ってしまう。後世の僧の記録の中に「クシャーン人によって殺された民数億人」とはまぁ眉ツバだとしても、その凄まじい殺戮は想像を越えていたんだと思う。そうした地獄図の中にいた当時のインドを覆うのが「形あるものはすべて変化する。常なるものは一つとして無い。『色即是空』である」という諦念だったらしい。

 そういや『平家物語』にもこんなん流れてたぞ。いや待て、ありゃ「無常感」だと習ったか。んなことぼんやり浮かべてたぼくの頭をガツンと見舞ったのが、つづくナレーション「そうした一種"諦め"の中から登場したのが、"ゼロ"からすべては始まる、形となって現われる、という救いの悟り『空即是色』だった」云々。そうかい。そういうことだったのかい。それなら無常感から一歩前に歩き出した『徒然草』は『平家物語』よりエライんだな。…単純かいぼくは。

 きみはかつて『All Things Must Pass』と言い放った。はたして吉田兼好ばりの境地に立っていたのか否かきみは。それとも単純に「色即是空」というフレーズにその琴線が触れたのか。古いアルバムを聴き返してみるよ。

 むー。音を聴く限りじゃGeorge Harrisonという裸のきみがぐいぐい迫ってくる。力みなぎり、地に足をしっかりつけ、その目ははるか前方を見据えてるような感触がある。「閉じ」ていない。「開い」ている。だいたい「My Sweet Lord」なんて、なんとまぁ勢いのあるゴスペルの匂いを蒔き散らす音なんだ。そうなんだ。こうしてきみはいつだって前を向いて歩いていたんだ。ぼくたちと一緒に。

 2年前の冬、しかし、そんなきみはぼくたちを残し忽然と消えた。現世を歩くことをやめてしまった。きみはもうここにいない。二度と会うことはない。これは色即是空なのか、それとも空即是色なのか。All Things Must Passだともう一度きみは言い放つか、ジョージ。

 ねぇ、ジョージ
 そこにはジョンがいるんだよね
 二人でギター抱えてさ
 地上に風を吹かせておくれよ
 ジョン一人じゃまだ無理なのさこの星は

 ねぇ、ジョージ
 ときどきくじけそうになるぼくに
 きみとジョンのパワーを分けておくれ
 ぼくが気づかないように

 ねぇ、ジョージ
 ぼくは歩いていくよ
 そして
 きみを忘れていくよ

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