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PHISH フィッシュ PHISH

 こいつらの最近のディスコグラフィは滅茶苦茶だ。『Live Phish』シリーズを一体全体何本出せば気が済むのだ。スタジオ盤だと2002年の『Round Room』以降リリースされてないはず…というような情報は、この膨大なライブシリーズの前ではもうどうでもよくなってしまう。よく引き合いに出されるGrateful Deadの怪しげなサイトにも彼らのライブは存在するし。

 それはともかく、Phishである。あまり印象に残らなかった先の『Round~』はさておき、『The Story Of The Ghost』(98)や『Farmhouse』(00)をはじめ、彼らの作風は独特だ。ワン・アンド・オンリーだ。かつての『A Picture Of Nectar』(91)や『Hoist』(94)も楽しめたが、今回は、

Phish_billy
  『Billy Breathes』 1996年


を取り上げてみる。これが私と彼らとの出会いだったのだそもそも。

 つかみどころがないくせに聴き終わった後になにか残す、のはまずドラムスやらパーカッションの響かせ方のせいだ。例えば前曲にリンクするがごとくな混沌さの中で私の足元を支えるさながら初期Santanaなリズム隊「Cars Trucks Buses」の躍動感はどうだ。っても途中から参加してくるアコピはそれをせせら笑うかのように自由自在。そう。自由自在。あるいは自由気まま。自分達の好きなように、自分達の呼吸、気分のみにしたがって全13曲を歩いていく。

 アルバム初っ端「Free」~「Waste」3曲に漂うのは70年代前半なウェスト・アメリカン・ロックの乾きといっていい。どうってことのないメロディに乗せてときにつぶやき、ときにフォルテッシモなコーラスでなにやら歌っている。Crosby, Stills, Nash & Youngの上っ面を真似たようなハーモニーは退屈だ。と思わせるも、「一人が主で一人がサブ」というより、別々のパートが並行して進んでいきながら気がつきゃ最後には一つに束ねられてる、てな印象が人を食っていておもしろい。

 各パートが並行する、という手法はつづく4曲目「Taste」終盤にも使われてるけど、こっちは最後まで束ねられることがない。自分のリズム。自分のビート。てんでばらばらに進む様は妙な混沌の中に私を陥れる。リズムの親玉は一体どこにいるんだ。これと同じ演奏を寸分たがわず再現できるのかおまえら。しっかし、この曲好きやねん私ゃ。

 この混沌さを受け継ぐ「Cars Trucks Buses」、よーしここで休憩だ、な「Talk」と流れ、「Theme From The Bottom」の登場だ。大きくもゆったりした波に乗って規則正しく揺れる船を想像させる出だしは気持ちがよくて眠気を誘う。ようやく迎えるサビのフレーズにここでも連想してしまうのは大らかな70s米国産ロックである。が、このサビという灘を過ぎてしばらく進むうちに、海と船はその様子を徐々に変えていく。心地よかったベース&アコピアノは別のアコピの叩く旋律によってねじ曲げられ、不協和音を奏で始める。舳先は海上から空中に向けられ、少しずつ上昇していく。おいおい、これからどこに向かうんだ。う、宇宙戦艦ヤマトかこりゃ。いや、んなカッコいいもんじゃないな。終点のない銀河鉄道かもしれん。にしても、んなにぐんぐん上昇するんじゃない。変な気をおこすじゃないか。 Pat Methenyがふわふわ連れてってくれる天空への駆け巡り方とはまた違う味わいだ。しっかし、この曲いっちゃん好きやねん私ゃ。

 つづく4つの小品が高揚した気持ちを穏やかにさせてくれるたぁ演出か。5分半あるタイトル曲を小品に含むのもなんだけど、他の3曲と同じようにつぶやくように流れていくからそれでいいのだ。「Train Song」のハモり方はSimon & Garfunkelを見てるよう。んでもS&Gにしちゃぁひねくれてる。

 「Steep」というこれも1分半程度の曲途中から顔を出すボーカルのスタイルって初期Pink Floydのそれみたいだ。静かに重ね合わせたボーカルになんだかよく分からない効果音を絡ませるお遊び?もかつてのフロイドがよく使ってた手だし。

 演奏は締まってるくせに、醸し出す雰囲気はおおらかで、すっとぼけてて、締まりがなくて、つかみどころがなくて。でも私を引きつけてやまない不思議なバンド。それがフィッシュなのである。

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Tracked on Apr 05, 2004 at 00:39

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