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白石一文 『草にすわる』

 短編『草にすわる』と『砂の城』収録

 『草にすわる』に流れるテーマは、人は自分の中の弱さを本当に「知る」ことができないがゆえに、本当に「知る」ことで初めて再生する…てなとこだろうか。一人で歩いていかなくてもよい。自分を助けてくれる人に手を引かれていけばいい。諦念の対極にあるものがそこに。

 かたや『砂の城』のそれはちょっと分かりにくいけど…。文学界のヒーローにして重鎮。60の齢を過ぎた主人公の自他ともに認める、それが姿だ。彼の中にある、しかし、暗闇というか弱みの部分は、ある日ひょっこり自宅に連れて来られた彼の孫に流れる「血」のリアリティと、その母親(息子の嫁)によって書きとめられる家族構成の丁寧な文字によって、温かなものに取って代わっていく。公園でウーロン茶を含んでるときに突如それが身体の奥底から込み上げてくるラストシーンは切ない。「生きている」ことへの素直な感謝の気持ちに初めて満たされる描写は温かくも、どうしようもなく切ないのだ。

 白石一文が放つであろう次の長編へのステップとして位置付けしたくなるような両短編でもあり、興味深い。

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