MUSIC 2011年の収穫

 2011年に手に入れたCDは全部で160枚弱。それ自体は例年とあまり変わらないが、今回はGang Gang DanceやLos Campesinos!以外に、頭をかち割るような強力な作品が見当たらなかった。それはともかく、上半期は安藤裕子や鈴木祥子をよく聴いてたな。とある曲を歌う安藤の声が小谷美紗子のそれに重なったのがきっかけだ。そこから彼女の作品を片っ端から聴き漁り、オマケのような形で鈴木祥子に辿り着いた。で、夏場から秋口にかけては少女時代にハマることになる。直近のシングル「The Boys」にはがっかりしたんだけどね。例えば「Hoot」に香り立つコリアン・テイストを損なってほしくはない。


 <BEST20>

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1 Gang Gang Dance  『Saint Dymphna』  08年


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2 Los Campesinos!  『Hold On Now, Youngster』  08


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3 伊藤ゴロー  『Cloud Happiness』  10


Black_holes_muse


4 Muse  『Black Holes And Revelations』  06


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5 斉藤和義  『45 Stones』  11


Hoot_snsd


6 少女時代  『Hoot』  10


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7 Admiral Radley  『I Heart California』  10


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8 Jill Scott  『The Light Of The Sun』  11


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9 Donavon Frankenreiter  『Move by Yourself』  06


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10 Gush  『Everybody's God』  11


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11 安藤裕子  『クロニクル』  08


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12 Florene + The Machine  『Lungs』  10


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13 Paul Simon  『So Beautiful Or So What』  11


Nakunai_tamurapan


14 たむらぱん  『ナクナイ』  10


Pretty_odd_panic


15 Panic At The Disco  『Pretty Odd』  08


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16 キノコホテル  『マリアンヌの恍惚』  11


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17 鈴木祥子  『Sweet Serenity』  08


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18 Elliott Smith  『An Introduction to...』  10


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19 Elvis Costello  『National Ransom』  10


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20 安藤裕子  『Japanese Pop』  10


 <次点20(ミュージシャンのアルファベット順)>

・ 安藤裕子  『Merry Andrew』  06年
・ 安藤裕子  『shabon songs』  07
・ 安藤裕子  『The Best '03-'09』  09
・ Los Campesinos!  『We Are Beautiful, We Are Doomed』  08
・ capsule  『World Of Fantasy』  11
・ G. Love & Special Sauce  『Superhero Brother』  08
・ Jack Johnson  『To The Sea』  10
・ Lily Chou-Chou  『呼吸』  01
・ Muse  『The Resistance』  09
・ Tristan Prettyman  『Hello...x』  08
・ The Rakes  『Klang』  08
・ Rumer  『Seasons Of My Soul』  11
・ 坂本美雨  『HATSUKOI』  11
・ Salyu  『landmark』  05
・ The Sea And Cake  『Glass』  03
・ 相対性理論  『正しい相対性理論』  11
・ たむらぱん  『ノウニウノウン』  09
・ Them Crooked Vultures  『Them Crooked Vultures』  09
・ Weezer  『Hurley』  10
・ Paul Weller  『Wake Up The Nation』  10

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MUSIC 2010年の収穫・上

 今年一番の収穫は小谷美紗子との出会いである。初期の作品、特に『i』と『うた き』に散見されるやや稚拙(だと私が思う)な肩肘張った社会メッセージ色にはいまだに馴染めないけど、それ以外は完全にハマってしまった。こんなにも魅力的なシンガー兼ピアニストが10年以上も活動していたなんてまったく知らなかった。くそぉ。なにしてたんだよぉ俺は。ぐぐぐ。大いなる不覚である。彼女については語りたいことが山ほどあるのだけど、それはまたいつか。

 2011年は彼女のライブを見たい。ひたすら見たい。どこかのだれかに似ているようで全く似ていない喉と鍵盤を転がる指との絶妙なコンビネーションによって立ち上る彼女の香りにどっぷり浸りたい。東京だろうが大阪だろうが、仕事があろうが葬式があろうが、必ず駆けつけるぞ。待ってろ美紗子。

 とか言いながら、2010年のベスト1はナタリアなんだけどね。ふはは…じゃなくって、ふ、ふ、ふ。


 <BEST1~10>

Natalia_huhuhu
1 Natalia Lafourcade  『Hu Hu Hu』  10年


Odani_night
2 小谷美紗子  『Night』  03


Garneau_radio
3 Chris Garneau  『El Radio』  09


Regina_far
4 Regina Spektor  『Far』  10


Tokyojihen_sports
5 東京事変  『スポーツ』  10


Iggy_preliminaires
6 Iggy Pop  『Preliminaires』  09


Rufus_milwaukee
7 Rufus Wainwright  『Milwaukee At Last!!!』  09


Pallet_heartland
8 Owen Pallett  『Heartland』  10


Sotaiseiriron_hifi
9 相対性理論  『ハイファイ新書』  09


Kahimikarie_trapeziste
10 カヒミ・カリィ  『Trapeziste』  03

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MUSIC 2010年の収穫・中

 <BEST11~20>

Beck_information
11 Beck  『The Information』  06年


Odani_kotonoha
12 小谷美紗子  『ことの は』  10


Odani_then
13 小谷美紗子  『Then』  02


Odani_trio
14 小谷美紗子  『Odani Misako Trio』  08


Natalia_casa
15 Natalia Y La Forquetina  『Casa』  05


Elephant_akuma
16 エレファント・カシマシ  『悪魔のささやき』  10


Zahra_handmade
17 Hindi Zahra  『Handmade』  10


Capsule_flash
18 Capsule  『Flash Best』  09


Maaya_lucy
19 坂本真綾  『ルーシー』  01


Cocco_emerald
20 Cocco  『エメラルド』  10

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MUSIC 2010年の収穫・下

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<次点26 (ミュージシャンのアルファベット順)>
・ Arctic Monkeys  『Humbug』  09年
・ 浅井健一  『Sphinx Rose』  09
・ Diane Birch  『Bible Belt』  09
・ チャットモンチー  『告白』  09
・ Kim Churchill  『With Sword And Shield』  10
・ クラムボン  『まちわび まちさび』  00
・ Eric Clapton & Steve Winwood  『Live From Madison Square Garden』  09
・ Cold Blood  『First Taste Of Sin』  72
・ Curved Air  『Phantasmagoria』  72
・ Neil Michael Hagerty  『Neil Michael Hagerty』  01
・ 小島麻由美  『Blue Rondo』  10
・ 巨勢典子  『birth』  10
・ Money Mark  『Push The Button』  98
・ 松田美緒  『クレオールの花』  10
・ Gilbert O'Sullivan  『Himself』  71
・ Procol Harum
  『Live In Concert With Edmonton Symphony Orchestra』  72
・ くるり  『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』  10
・ 斉藤和義  『Are You Ready?』  10
・ 坂本真綾  『かぜよみ』  09
・ サンボマスター  『きみのためにつよくなりたい』  10
・ 相対性理論  『シンクロニシティーン』  10
・ The Surf Coasters  『Surface Impression』  96
・ Tomovsky  『幻想』  09
・ Suzanne Vega  『Beauty & Crime』  07
・ Martha Wainwright  『Sans Fusils, Ni Souliers, A Paris』  09
・ Weezer  『Weezer (Blue Album) -deluxe edition-』  04


 <早く聴いてみたい>
・ minmi  『Mother』  10
・ 持田香織  『NIU』  10
・ 結城アイラ  『Eternalize.』  10

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MUSIC 2010年の収穫 【映像編】

 <BEST1~7>

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1 斉藤和義  『歌うたい 15<16 at ZEPP TOKYO』  09年

Zeppelin_zeppelin
2 Led Zeppelin  『Led Zeppelin』  03

Kazuyoshi_hikigataruosakajo
3 斉藤和義  『十二月 in 大阪城ホール』  10

Kazuyoshi_tsukibudokan
4 斉藤和義  『"月が昇れば" at 日本武道館』  10

Cocco_kirakirabudokan
5 Cocco  『きらきら ~Final at 日本武道館 2 Days~』  08


Littlefeat_highwire
6 Little Feat  『Highwire Act Live in St. Louis 2003』  03


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7 Bad Company  『Hard Rock Live』  10

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ジョンが呼んだ

 めまいがした。歩こうとする足元やからだ全体がふらつく。

 なんだこの肌に絡みつく、まるで大浴場に入り込んだときに押し寄せてくるような熱気は。ああ、たまらない。そうなのだ。このめまいやふらつきはこの尋常でない気温の高さからきているのだ。決して昨夜そして今朝きみを抱…、うん、そのせいだけではない。ないと思う。思いたい。思おう。はは。

 空調の効いたホテルをチェックアウトする東京は午前中からひどく暑かった。大崎駅の改札口前で、私達(というか、私)は切符を買おうか買うまいか躊躇していたのだ。行先は「さいたま新都心」。発券機上の運賃図を見ると540という数字が読めた。えーと、540円の距離というか、かかる時間はどれくらいなのだ。東京暮らしから離れてもう20年以上。金額からとっさにつかめていた感覚はとうに失われている。

 行くのやめようかな。えー!せっかくここまで来たのに。だってなんか遠いじゃん。遠いったってそれほどでもないし、最初に行こうって言ったのあなたじゃない。でもふらふらするんだよ俺。(きみが朝から激しかったせいだぜ、とは勿論言わない。言えない) だいじょうぶだよ、電車の中は涼しいんだから。いや、駅ホームに辿り着くまでにきっと倒れるよ俺、だからいったん戻って涼もう、今通り抜けてきたビルの中でさ。

 こうして小一時間ロビーのソファでのびていた私達(というか、私)は、ほんのり残る甘い気だるさを背負いながらのろのろと再び出発駅に向かった。もうお昼だというのにね。山手線から京浜東北線を乗り継いで40分後、到着した駅を降りると、大きな建築物が迫り、視界を徐々に占めてくる。さいたまアリーナと呼ぶらしい。この頃になるともうすっかり回復していた私はすでにわくわくしている。昼食を適当に済ませ、足取り軽くアリーナに向かった。

 おおっ、見えたぞ。ジョンだ。私が知っているジョンの顔だ。

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 ジョン・レノン・ミュージアム。いつか来よう、来ようと思いながら先延ばしにしてきた場所のひとつである。

 不謹慎かもしれないが、凶弾に倒れてから初めてジョンのファンに私はなった。それまではポールの紡ぐメロディだけに耳や目が向いていたのだった。ジョンの生き様やスタンスに共鳴し始めたのは、繰り返すが、彼の死後である。情けなくもあり、ずるくもある。でもまあ仕方ない。しかし、それも今は昔のこと。10代は遠くなりにけり。その後、彼に共感するほどの青臭さはなくなり、感性は水気を失い、あるいはすれてきた。要は、いっぱしのオトナに成り下がっていたのだ。

 ミュージアム各展示ゾーン(部屋)で、だから私の目を引いたのはジョン直筆の歌詞やメモくらい。レストランのメニュー紙の裏とか、何かのチラシの裏などに走り書きされた例えば「Help!」、「I'm a Loser」、「Imagine」、「Starting Over」に目が釘付けにはなった。このミュージアムは10に隔てられたゾーンを巡回することになっているのだが、9つ目あたりになると、さすがに少し食傷気味。

 10番目、「ファイナル・ルーム」と名付けられた場所に足を踏み入れる。壁から天井から、ボードから椅子から、すべてが白で統一されている。まるで「Imagine」のPVを見ているかのような光景。ちょっと疲れてもいたので白い椅子に二人座った。天井に届く目の前のボードの表と裏には、そのときどきに発せられた(歌われた)ジョンのつぶやきだのメッセージだのが日本語に訳されてアトランダムに連なっている。短文の羅列である。40数例はあっただろうか。椅子にもたれながら、話しもせず、じっと眺め、その羅列を天井から床に向けてひとつずつ読んでいった。きわめてシンプルな文ばかりである。いくつかここに載せてみる。


 ぼくのマネしちゃ ダメだよ
 歩けもしないのに 走ろうとしてたんだ


 どっちを向いているか わからなけりゃ
 どっちに進んでいいか わかんないだろ


 もう ニセモノにはうんざりだ
 ぼくはホンモノがほしいんだ ホンモノだけがほしいんだ


 心を開いて 「イエス」って言ってごらん
 すべてを肯定してみると 答えがみつかるもんだよ


 誰だって 苦しんだり 怖いめにあうために 生まれてきたんじゃない
 きみは どこへでも行けるのに どうしてそんなところに とどまっているんだい?


 真実をもとめて よりよい生き方を さがしてるって?
 そんなの 自分自身をみつめることから にげるための 言いわけだろ?


 そんなにがんばらなくてもいいんだよ
 たまには息ぬきが必要さ
 人生は かけぬけるもんじゃないんだ


 彼女がいないと ぼくはダメなんだ
 水のない花のように しおれてしまうし 太陽がてらないように さびしい
 ふたりで ひとつなんだ

 ━ John Lennon


 あらら。目尻からゆっくり流れ出したぬるい水が私の「オトナ」を溶かし、隠れていた「少年」をむき出しにしてしまったよ。オトナぶってどうすんのつかけん、だったんだよ。

 ここに来てよかった。

 この最後のゾーンを出たところ、さりげなく置いてあるオノ・ヨーコの文章に目をとめる。「…ジョンの魂は一つの場所に留まっていることができません。魂が死んでしまうからです。当初5年という予定が10年の長きに及びましたが、そろそろジョンは行かなくてはなりません。今年2010年9月をもって、このミュージアムを閉館させていただきます…」。←記憶で書き不正確も、およそこんな文面

 なんだって。閉館目の前じゃないか。…そうか。私はぎりぎり間に合ったのか。虫だかなんだかが知らせたんだなきっと。早くここに来いと。いくら私の普段の行いが良いからといったって、こほん、これは幸運でも偶然でもなく、やはり必然だったんだろうな。

 大崎駅でゆだっていたあのとき、諦めなくてよかった。ありがと。きみのおかげでもある。あると思う。思うかも。思ってやろう。…思え。


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ドラムスっ子

 タイコを叩く音や叩く人が昔から好きだった。そういう私も叩くのが好きだ。いつぞや楽器博物館@浜松に「どうぞご自由に叩いてくだしゃんせ」てなアフリカだかアジアだか、涎の垂れそうなエスニック太鼓がそこかしこに置かれた一室があって、閉館間際だったせいもあろう、他の来館者がだーれもいないのをいいことに独り占め。なに。そろそろ閉館だと。無理無理。俺の手はもう止まらんよ。今しばらく没頭させてくれたまえ、館長。ぼかすかぼかすか、ぼんぼこぼこぼこ…。結局30分位叩きまくってたんじゃないかな。ああ堪能した。


 ところで、ピンク・フロイドのポンペイ・ライブで見せた「吹けよ風、呼べよ嵐」のニック・メイスン以外で印象に残るドラミングといえば…。

 うーん、「Live With Me」と「Hot'n' Nasty」のそれだな。ハンブル・パイというバンドだ。前者は『Humble Pie(大地と海の歌)』1曲目、後者は『Smokin'』やはり1曲目に収録されている。とりわけ「Live With Me」には出だしから、展開から、終盤へのなだれ込みから、もうずーーっと耳が釘付け。8分間もだぜ。スティーヴ・マリオットとピーター・フランプトン以外の名前を知らない不届き者は、しかしホントにこの二つのスピーカーから流れてるんかいな、と耳を疑ったものだ。大きさと音色の違う数々のタイコとシンバル群。さほど多くはないだろうそれらにぐるりと囲まれた「彼」はエンジニアがセッティングしたであろうマイクにその1ビート1ビートを刻み付けてゆく。繊細かつ大胆に。柔和かつ劇烈に。ゆったりとしたテンポは守りつつ、スピーカーの位置なぞ関係無いもんねとばかりに私が座る部屋に見事な空気が。空気が揺れるぞ。今のはバスドラか。こんな音って再現できるのか。しかしなんちゅう存在感だ。部屋に溢れるドラムスの大らかでいて引き締まった乾いた音。音。音。うう。なんで鳥肌が立つんだ。マリオットが絞り出すヤラしいボーカルとのマッチングを絶妙と呼ばずなんと呼ぶ。

 ドラマー、ジェリー・シャーリーが響かせるタイコの音はアルバム毎にかなり違っていて、これはプロデューサーというより、エンジニアの成せる技だったのだろう。という下手な想像はともかく、40年も前にレコーディングされたハンブル・パイの「Live With Me」。永久に朽ちない一品がここにある。


 他にも私を魅了したタイコ叩きは数多い。ツェッペリンならマンモスの足踏みを現代に蘇らせたジョン・ボーナムは1曲たりとも外せないし、バッド・カンパニーなら1stアルバムでスティックの先から精気ほとばしらせたサイモン・カーク。70年代最後に登場したザ・ポリスなら千手観音ばりのスチュワート・コープランド。「白いレガッタ」後半の畳みかけったらない。キース・ムーンもたじたじだぜ。ストーンズのチャーリー・ワッツならアルバム『Black And Blue』だけでも。そうそう、カレン・カーペンターの軽妙なドラミングにもどきりとさせられたんだった。


 この70年代フィールドだと、ドン・ブリューワー(グランド・ファンク)やジョーイ・クレイマー(エアロスミス)、それにイアン・ペイス(ディープ・パープル)だのロジャー・テイラー(クイーン)だのアレックス(ヴァン・ヘイレン)だの、はたまたブッチ・トラックス(オールマン・ブラザーズ)やドゥービー・ブラザーズのツイン・ドラムス←だれだっけ、なんかを思い出したいのだけど、ドラムスに限るなら、こうした連中にはこれといってぶん殴られたものが今思いつかない。残念。


 80年代に入ると、もう今ではとうに飽きてしまったものの、スティーヴ・リリーホワイトやヒュー・パジャム仕込みのドラムス音には狂ったな。彼らがプロデュースあるいはエンジニアを務めた例えばピーター・ゲイブリエルのそれ。中期XTCのそれ。ケイト・ブッシュのそれ。で、他は全滅。ガンズすらも。生ドラム不毛の80年代にあって、私がすがりついた唯一のタイコがフィルターを通した人工音というのは皮肉なものだ。

 90年代以降は、大らかさには欠けるも、青空に干したシーツのように乾いた、あるいは尾びれを海面に叩きつけるザトウクジラのようにずしりとしたドラムスが戻ってきた。初っ端が『The Bends』のときのレディオヘッド。『Replenish』のときのリーフ、特に「Choose To Live」。『Three Snakes And One Charm』で豊饒な汁を滴らせたときのブラック・クロウズ。アンクル・テュペロとそこから枝分かれしたウィルコとサン・ヴォルトなどなど。


 わが国にっぽんはどうなんだ。

 四人囃子の岡井大二、を思い出したぞ。鬼気を詰め込んだアルバム『一触即発』の「おまつり」やタイトル曲あたりは今でもうぶ毛をそそり立たせる。ぞぞぞ。つづく『ゴールデン・ピクニックス』ラストに収録された「レディ・ヴァイオレッタ」のミディアムテンポな叩きの味わい深さにもうっとりだ。

 時代はぐーーんと飛んで、斉藤和義97年発表の『ジレンマ』1曲目「僕の踵はなかなか減らない」には打ちのめされた。特に終盤、奥行きが広がったかのように打ち鳴らされるドラムスの前で身動きがとれなくなったんだ。「すっぱいぶどう」に見る不純物を一切含まないスティックの打ち下ろしにもヤラれたな。このアルバムは和義がすべての楽器を担当したと聞いている。そうなんだ。和義はドラムスで私を振り向かせたのだった。これがそもそも彼との出会い。以降、彼の世界にどっぷりハマることになり、現在に至る…というのはまた別の話。

 っと、森高千里を忘れてた。『Step By Step』に収録されたビートルズのカバー「あっしと手前の猿だけはお天道様にさらしても構わねえとおっしゃるんですかい皆様方…」はまんまビートルズだよ。千里のドラミングはまんまリンゴだよ。って、これは褒めているんですぜ皆様方。彼女の叩き方には無駄が無い。潔い。天晴也。普段、印象に残るようには見せなかったけど。これが案外深い。「渡良瀬橋」とかね。


 さて、最後にザ・ポリスの「ロクサーヌ」を添えて〆よう。スチュワートのドラミングってセクシーだ。サビをコーラスするときの彼はハチドリのようだ。…なんだまた動画かよ。などと言ってはいけない。ああ、いけないとも。本人もどうかと思ってるんだもの。かか。

Roxanne

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ポンペイ

…NHKでたまたま見てしまった野外"スタジオ"収録作品『Live At Pompeii』。に登場する「吹けよ~」で畳み掛けるドラム・スティックを勢い余ってNick Masonに跳ね飛ばさせ、瞬時にスペア用を引き抜き、打ち続けさせたあの緊張感、がたまらなく好きなのだ。…

━【マイ・オムニバス VOL.5】より抜粋


そう。これこそ今まで見た中で一番衝撃を受けたビデオ。ピンク・フロイドの「吹けよ風、呼べよ嵐」。4分40秒過ぎにそれは待っている。

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おつかれさまの国

 これは期間限定のエントリーになるかも。ならないかも。どっちなんだ。さあねぇ。ふはは。とりあえず再アップ。


 一人見知らぬ地を1年間走りぬけたきみに。

 8月からまた未知なる道に足を踏み出すきみに。

 
 ついでに、この4月から走り続けたぼくにもね。

 そしてぼくと一緒に走り続ける、ミスして悔し涙を流したSちゃん、きみにもだ。

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夏のアカペラ

 壇上にはミドルティーンの女の子たち30人余りがきれいに並んでいる。どの子も顔や肩や姿勢を緊張させながら。

 始まった。伴奏もなく音楽教師と思われる指揮者のタクトだけを目で追うアカペラがほとんど起伏の無い旋律をなぞり続ける。ピアニッシモとせいぜいがピアノだけの抑えられた声量は、単純な歌詞を輪唱によって延々と繰り返すことで退いては返す波のようなうねりをステージの上に作り上げた。曲名を失念してるのだけど、だれもが口ずさんだはずの童謡だ。「ほたる」という名だっけ?

 この小さな声量の輪唱アカペラは客席でふんぞりかえっていた私の姿勢を正させ、唾を飲むことさえ許さない。私がステージに見たのはまぎれもなく蛍だ。暗闇にぼうっと浮かんでは消える蛍の光のハーモニーだ。これは"歌"じゃない。歌による情景スケッチだ。輪唱最後の声が消え入るような「ほっ」で終わった瞬間、そこに飛んでいた蛍の群が闇の中に消えていくのを見た。

 動けなくなっていた客は歌が終了してもしばらくそのまま。はっと我に返り、嵐のような拍手が会場に湧き立った。見ると、ステージの上にはどこにでもいる10代の女の子たちが顔を上気させてたたずんでいた。暑い夏の市民文化会館。


 そういえば、これと似たようなステージを20年ほど前にも体験している。同じ7月だったかな。やはり暑い夏だった。

 会場は市民文化会館とは比較にもならない小さなホールである。舞台に並ぶ主役は10名にも満たない心細気に見える女子中学生。大丈夫かなこんな少人数で。アカペラだというのは同じだが、このときは輪唱ではなく二部合唱。おいおい。この人数をさらに分けてどうすんの。

 「さとうきび畑」という歌をまともに聴いたのはこのときが初めてである。まだ顔のどこかにあどけなさを残す彼女たちの声は穏やかで淡く、でも、一生懸命だ。正面切らない歌詞だからこそ、深い井戸の底で眠り続けるひそやかな悲しさというか、やるせなさというか、は、あとからずしんっと伝わってくる。彼女たちの予想外な美しい声と旋律で運ばれる静謐な詩に私はうろたえ、なにかがせり上がり、それが目尻からこぼれてきた。「反戦歌」なんて安易なレッテルを拒む意志がここにはある。この歌との出会いがこういう場だったのは多分幸運なのだろう。感謝したい。

 合唱が終わった後、ステージを下りる彼女たちの一人に声をかけ、無理を承知でもらった「さとうきび畑」の楽譜は20年のときを超え今も私の手元に残っている。すっかりセピア色に変わったけれど。

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